不動産を売買や賃貸するとき、直接売主や大家さんから物件を買ったり借りたりする人は殆どいません。
不動産業者を通さず直接取引をすれば仲介手数料がかからないので安く済むのに、なぜそうならないのでしょうか?
不動産業者を通さないと、どんな問題があるのでしょうか?
今回は不動産の取引でなぜ直接取引が広まらないのか、不動産仲介の役割と必要性について元不動産仲介会社勤務で宅建士の管理人が解説します。
不動産業者はいらない!?不動産業者の必要性と役割
不動産仲介会社の役割は、主に以下の5つがあります。
1,希望の物件を探してくる
2,物件にどんな問題があるか調査する
3,不動産売買・賃貸のアドバイスをする
4,取引する人の間に立ち両者の要望を調整する
5,住宅ローンのサポート
それぞれ解説します。
不動産業者の役割1,希望の物件を探してくる
お客さんの希望を聞いて、物件を探してくるのも不動産業者の役割の一つです。
不動産業界には、レインズという不動産業者しか見ることができないサイトがあります。
不動産業者は売主や貸主から物件の売却や賃貸の依頼をされると、基本的にレインズに物件情報を登録しなければいけません(一般媒介契約は任意)。
また、売主から表にはわからない形で売却して欲しいなどの依頼があったり、新築戸建てを建てている不動産業者から売却活動前に物件情報を仕入れることもあります。
一般の人たちは、スーモやアットホームなどの不動産情報サイトを見て物件を探しますが、不動産業者にはそのようなサイトに載っていない情報や、載る前の情報も入ってくるので、一般の人と情報の量やスピードに差があるのです。
また、単純に不動産を探すのは時間もかかるし根気のいる作業です。
探している人の代わりに不動産業者が探してくれれば、とても楽です。
不動産業者の役割2,売買・賃貸する物件にどんな問題があるか調査する
不動産仲介会社の重要な役割の一つに、取引する不動産はどんな物件なのか?問題がないのか?など、現地確認や法令上の制限等を調査することがあります。
不動産というものはとても身近な存在なのですが、実は様々な法律が関わっています。
また、生活の土台となるだけでなく、取引する際に大きなお金が動きますのでトラブルになりやすいですし、万一トラブルになった際のダメージがとても大きくなる可能性があるので、専門知識のある不動産仲介会社が取引前にしっかり調査するのです。
不動産仲介会社には、店舗の規模によって一定数以上の宅建士の資格保有者がいなければいけません。
宅建士は、民法やその他不動産に関わる様々な法律を勉強して試験に合格した人しかなれませんので、営業担当者が宅建士の資格を持っていなくても、契約前には必ず宅建士が内容をチェックした上で、説明する義務があります。
不動産業者の役割3,不動産売買・賃貸のアドバイスをする
不動産仲介会社は、多数の取引を仲介してきた経験や、取引当事者からの体験談等を沢山聞いています。また、不動産に関する法律などの専門知識も豊富です。
そういった知識や経験をもとに、お客さんに物件のいい点悪い点、注意点などをアドバイスするのも役割の一つです。
お金のことしか考えていない不動産会社や、ノルマのキツい営業マンなどは、いい点しかお客さんに伝えず、アドバイザーとしての役割を果たしていないこともあります。
不動産業者の役割4,取引する人の間に立ち両者の要望を調整する
不動産の取引は、金額だけでなく細かな条件を売主と買主の間で合意しなければ契約できませんから、不動産仲介会社が間に入って調整するのも役割の一つです。
調整する条件の例をあげると以下のようなものがあります。
・売買価格(値引き)
・物件の引き渡し時期
・建物のある売地の場合、更地渡しか古家付きのままか
・敷地の境界確定
・残置物や付帯設備をどこまで残すか
交渉事では、間に第三者が入った方が上手くいく場合もあります。
不動産業者の役割5,住宅ローンのサポート
不動産を購入する際は、ほとんどの人が住宅ローンを利用しますので、不動産仲介会社は住宅ローンを利用できるようにサポートするのも役割の一つです。
物件にも購入者の収入などによっては、住宅ローンの審査を通すのが難しい場合もあります。
そんなとき、住宅ローンを利用できる銀行を探したり、手続きに必要な書類を用意するなども、重要な仕事です。
不動産仲介会社の必要性
不動産仲介会社の役割について解説しましたが、不動産取引において本当に不動産仲介会社は必要なのか、以前不動産仲介会社で働いていた私の考えをお伝えしたいと思います。
まず第一に、個人的には不動産の売買においては、不動産仲介会社は取引の際に必ず必要だと思います。
理由としては、役割の部分でも解説した、【物件にどんな問題があるか調査する】という部分がとても重要だからです。
繰り返しになりますが、不動産には様々な法律・条令などが関係しており、これらをしっかり理解したうえで様々な調査をしてみないと、どのような物件なのかわからないのです。
いくつか関係する法律をあげると、建築基準法・道路法・都市計画法・区分所有法・民法・借地借家法・税法・不動産登記法など、たくさんの法律が関係しています。
これらは、不動産の価格(価値)にも大きく関係しておりますので、しっかりと調査していないと本当の価格などわからないのです。
不動産を売却する際に、複数の不動産仲介会社に査定額を出してもらう不動産の一括査定が流行っていますが、不動産会社によっては、自分達が媒介契約を取れるかどうかわからない案件にお金や時間をかけるのは勿体ないので、机上査定といって本当にサラッと最小限の調査しかせずに、査定価格を出している場合もあります。
このような場合、実際にしっかりとした調査をしたところ、全然価値が違っていたなんてことも珍しくありません。
もっと言うと、しっかり調査はしているけど、不動産仲介会社の知識レベルが低くて、間違った価格で売られている物件を見ることさえあります。私が見た中ですと、違法建築でない物件を違法建築として安値で売りに出している物件や、逆に違法物件なのに普通の物件の査定額を出している例を見たこともあります。
プロでさえこのようなことが起こりえるのに、一般の方が価格や問題の有無についてわかるわけがありません。
こういったことを銀行も理解しており、不動産の個人間売買では、基本的に住宅ローンは利用できません。
最近、不動産の個人間売買をマッチングするようなサービスがでてきていますが、不動産の素人が作ったか、お金儲けのことしか考えていないかのどちらかではないかと思います。
特に仲介会社を通さない個人間売買で不動産を購入することは大損する可能性や、とんでもないトラブル・問題を抱えてしまう可能性があるので、ご自身が不動産に精通していないなら絶対にオススメしません。
>>不動産 個人間売買のリスク!トラブルになる前に知っておきたい注意点を解説
不動産仲介会社は、物件の契約前に重要事項説明書という書類を作成し、名前の通り物件の重要な情報を記載した書類を作成し、宅建士が署名・捺印した上で、物件購入者に説明しなければいけません。
宅建士が署名・捺印をするということは、調査不足や内容に不備があった場合、法的に責任を負うことになります。仲介会社の中には、こうした万一の損害賠償責任に備えて保険に入っている会社もあります。
つまり不動産の購入者からすると、不動産仲介会社を通して物件を購入することは、物件の内容について保険を掛けているようなものでもあるのです。
上記より、一般の方が不動産の売買をする場合は、不動産仲介会社を通すことをオススメします。
まとめ
不動産仲介会社の役割は、主に以下の5つがあります。
1,希望の物件を探してくる
2,物件にどんな問題があるか調査する
3,不動産売買・賃貸のアドバイスをする
4,取引する人の間に立ち両者の要望を調整する
5,住宅ローンのサポート
不動産は、様々な法律や条令などが関係しており、一般の方が仲介会社を通さず個人間売買をするのは大変危険です。
金銭的・法的リスクなどを回避するためにも、不動産仲介会社を間に挟むことをおススメします。