
相続した田舎の実家や土地が売れなくて困っている…そんな方のために、上手な処分方法を解説します!
不動産は持っているだけで固定資産税がかかるし、手入れをしないと雑草や樹木が伸び放題、建物や塀が壊れて近隣の人に怪我させてしまう危険性や、苦情が入る可能性もあります。
このまま売れない場合どうなるのだろう…?さっさと処分してしまいたい…不安はつのるばかりですが、残念ながら田舎の不便な場所にある不動産は、簡単には売れません。
なぜなら多くの人は勘違いしているからです。相続した田舎の実家や土地を売却・処分しようとするとき、都会の物件と同じようなやり方ではダメなんです!
田舎の空き家や土地には、それに合った売り方・処分方法があり、多角的なアプローチと、早めの対応が有効です。
相続した売れない実家・土地を売却するときの心得
田舎の物件など人気がない不動産の売却は、都市部の一般的な物件の売却と同じようにはいきません。まずは、その点を認識して下さい。それがわかっていないと、上手く売却できなかったり、処分するまでに、余計に時間や金銭的コストがかかってしまう可能性があります。
売れない家や土地をうまく売却するための心得は、以下の4点です。
・欲を出さない
・なるべく早く行動する
・いろいろな方法を試す
・時間がかかるのが普通
欲を出さない
田舎など人気のない過疎地の不動産は、【タダでも処分できればラッキー】くらいの考えを持つことが大事です。
不動産は所有しているだけで、様々なコストがかかってしまいます。
また、田舎の不動産は人気がないですし、都市部に比べると人がいないので、商談に発展する可能性がそもそも少ないのです。
商談または、タダ同然でも引き取りたいという人が現れたら、絶好のチャンスと見て欲張らずに処分しましょう。
よくいるのが、田舎の物件でも売り出したら割とすぐ問合せがあり、もっと高く売れるのではないか?と欲を出してしまう人です。
不動産は売り出してから1ヶ月以内が一番反応があります。なので、売り出してすぐの反応がその後も続くことはなく、どんどん問い合わせは減っていきますので、欲張らずに最初の問い合わせで処分するつもりでいましょう。
なるべく早く行動する

田舎の家や土地でも、人が最近まで住んでいたなら使えますし、家も庭も手入れされていてきれいな状態であることが多いです。
しかし、その後放置しておくと、敷地には急速に雑草が生い茂り、樹木は伸び放題、建物や外構は朽ちはじめ動物や虫が住み着きます。時間が経過するほど見た目も中身も悪化していき、管理や手入れの手間やコストももかかるようになります。
いくら田舎の物件と言えども、見た目や中身がきれいな方が売れやすいのは間違いありません。
使い道がないなら、なるべく早く売却活動に取り掛かりましょう。
いろいろな方法を試す
需要の多い都市部の不動産なら、不動産仲介会社に売却を依頼しておけば、自分達は特に何もしていないくても家は売れます。
しかし、田舎の物件は、都市部の大手不動産仲介会社では対応してくれないことが多いです。また、物件のある場所の地元の不動産会社は、近隣の狭い範囲でしか売却のノウハウがないことも多く、売却する際に一概にここにだけ頼んでおけばいいというのがありません。
なので、【多角的なアプローチが最も効果的】となります。
具体的な処分方法については、後ほど解説致します。
時間がかかるのが普通
人気のない地域や人口の少ない地域の不動産は、売れるまで時間がかかるのが普通です。
長期的な目線で取り組むことに加えて、早めの行動が大切です。
不動産が売れるまでの、一般的な流れ
私は以前不動産仲介会社で働いていた経験がありますので、不動産が売れていく過程をたくさんみてきました。
一般的には物件を売りに出してから、売れるまで以下のような流れになります。
1,仲介会社に査定してもらう
2,売りに出す(チラシや不動産ポータルサイトへ物件情報の掲載)
3,売れなかったら値下げ
4,それでも売れなかったら、さらに値下げする
5,それでも売れず、問い合わせも来ない場合は、不動産買取業者に査定依頼
6,不動産買取業者が買取
売れるまでの流れについて、もっと知りたいという方には、上記内容について詳しく解説している記事もありますので、そちらをご覧ください。
⇒ 売れない家はどうなる?不動産仲介会社で見てきた、売れ残った物件が辿る道
地方でも、それなりに人が住んでいる場所であれば上の流れと同じような方法で、売却は可能だと思います。
しかし、田畑や山林が広がっているような場所では、買い取ってくれる不動産業者がいないかもしれません。
その場合は、一般的な売却方法では売れない可能性がありますので、以下で解説します。
相続した田舎の家・土地の処分方法
売れない家・土地を売却(処分)するには、何か一つの方法だけに頼っていては、時間がかかるだけでなく、いつまでたっても売れないなんてことになりかねません。
その間にも、物件の状態は悪化するし、固定資産税などのお金や管理の手間かかります。
そうならないためにも、なるべく早く処分するのが重要で、そのためには色々な処分方法を同時に進めるのが有効です。
以下で同時に進めたい、3つの売却・処分方法をご紹介します。
1,仲介会社にお願いする
地方の空き家を売却する場合は、物件所在地の不動産仲介会社に相談しましょう。
なぜかというと、日本の不動産仲介会社は大手でも全国展開しておらず、基本的には都市部にしか店舗がありません。また、売却する都道府県に店舗があったとしても、フランチャイズ店やグループの別会社であったりして、横のつながりがほとんどないに等しい状態です。
例えば、自分は東京に住んでいて、静岡の空き家を相続したから売りたい場合、東京にも静岡にも店舗がある不動産会社なら、東京の店舗の人に相談すれば静岡の店舗の人が色々現地で動いて売却してくれるかも!と思いがちですが、基本的にそうはなりません。
また、大手仲介会社は都市部の人気があり高額な物件の仲介をすることで、1回の取引で数百万円の仲介手数料を得るビジネスモデルなので、そもそも田舎の物件の売却ノウハウもないですし、地方のタダ同然、値段がついても数百万円の物件の仲介など、したくないのが本音なのです。
物件の所在地にもよりますが、売却して欲しいと頼むと、普通に断られることも珍しくありません。
空き家の所在地の不動産会社まで相談に行くのは大変ですが、地元の不動産会社の方が地域の不動産に関する情報にも詳しいですし、物件の写真を撮ったり購入希望者を案内する際にも、素早く対応してもらえます。
※ 注意点 ※
不動産仲介会社にお願いする場合は、媒介契約を結ぶことになります。媒介契約には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があるのですが、このうち専属専任媒介契約の場合、自己発見取引(自分で買主を見つけて取引すること)が不可となっているので、後ほどご紹介する方法を同時に行うとトラブルになる可能性があります。
媒介契約する際は、一般媒介契約か専任媒介契約にしましょう。
2,空家バンクに登録する
空き家バンクに登録するのも有効な手段の一つです。
空き家バンクという名称は聞いたことがあるけど、どのようなものかよくわからない…という方の為に、空き家バンクとは何なのか簡単に解説します。
【空き家バンク】とは、
その物件が所在する自治体の制度で、空き家の売却または、賃貸などを希望する所有者から申込みを受けた情報を、その物件所在地への定住等を目的として空き家の利用を希望する人に対して、紹介する制度をいいます。
空き家バンクへの登録には費用はからず、無料で利用可能です。ただし、仲介業者を介して契約に至った場合は、仲介手数料等が発生します。
上記の通り、自治体の制度なので安心して利用できます。(※全ての自治体が空き家バンクを設置しているわけではありません。)
以前はそれぞれの自治体が、個々に情報を開示していたので、情報が広まりづらい・開示情報が自治体によって違うなどの課題があった為、現在は国土交通省が【全国版空き地・空き家バンク】をつくりました。
これには、不動産情報サイト【ホームズ】を運営する㈱LIFULL、【アットホーム】を運営しているアットホーム㈱も参加しており、それぞれのサイトに全国の空き家を検索できる特設ページがあります。下にリンクを貼っておくので、どんなものか気になる方はご覧ください。
国土交通省の発表によると、全国版空き地・空き家バンクの運用開始後、で約6,000件もの成約実績(令和2年10月時点)があるとのことですので、是非とも利用したいところです。(自治体によっては、空き家バンクは設置しているが、全国版空き地・空き家バンクにはまだ参加していないところもあります。)
近年、都市部からのどかな暮らしや自然の中での生活を求めて、地方移住を希望する人が増えています。コロナ禍によってテレワークが推進されるようになって、地方にいても仕事ができる人が増えているのも要因のひとつだと思われます。
空き家バンクに物件の情報を登録しておくと、そのような人達が地方自治体に移住の相談をしにきた際、物件を紹介してくれます。
空き家バンクを設けている自治体によっては、地元の不動産業者などと提携していて、空き家の売却支援を行っている例もあります。
心得の部分でも記載しましたが、空き家を相続してから時間が経過し、草木が生い茂り建物が朽ち始めているような状態だと、住みたいと思う人も減るので、空き家バンクで紹介されても選んでもらえる可能性が低くなってしまいます。
なるべく物件がきれいで住居として利用可能なうちに、登録しましょう。
3,空き家無償譲渡サイトに登録する
先に紹介した2つの方法は、基本的に有償での譲渡を前提としています(一部除く)。物件の立地や、状態によっては有償では残念ながら買い手がつかないこともあります。
しかし、買い手がつかない物件でも、無償なら欲しい!という方がけっこういたりするのです。
そして、物件の無償譲渡を支援するサービスも存在しています。「みんなの0円物件」というマッチング支援サイトです。
こちらのサイトによると、
・2019年7月のサービス開始後、これまでに140件ほどの物件登録があり、8割以上がマッチング成立しているという実績。
・ひとつの物件に対しての問い合わせは平均数十件以上あり、最短1日でマッチングした事例もあり(マッチングまでの平均日数 15日)。
利用者からは「売れなくて処分に困っていた実家をすぐに手放すことができた」など、高い評価を得ています。
・様々な自治体とも連携協定を締結しており、地方紙だけでなく全国紙やテレビ局などにも取り上げられている安心のサービス。
・サービス自体の登録・掲載料は、無料となっております。
その後は、掲載後の譲渡希望者との折衝から契約、所有権移転手続き等を誰が行うかで2つのプランがあります。
1、全て自分で行う場合
最初から最後まで利用料は、全て無料
2、全て運営者側におまかせする場合
所有権移転完了時に、150,000円(税別)がかかります。
1のプランは、とにかく安く済ませたい・対応する時間があるという方にはメリットがありますが、無償譲渡といえども、契約ごとです。
不動産は敷地の境界線や、建物・土地の瑕疵(何かしらの問題点)などで後々揉めることも珍しくありません。そう言った問題が起きないような内容の契約書を作成する必要がありませんので、おまかせプランが個人的にはお勧めです。
以下に該当する方は、掲載無料ですので、ご登録することをお勧めします。
・既に売りに出しているが買い手がつかなくて困っている
・0円でもいいから手放したい
・毎年固定資産税などの費用が負担となっている
・物件の状態が悪い
・不動産仲介会社に仲介を断られた
・とにかく早く処分したい!
4,国に引き取ってもらう(相続土地国庫帰属法2023年4月27日から)

2021年4月に、相続などにより取得した土地を手放すための制度に関する法律「相続土地国庫帰属法」が成立しました。
23年4月27日から施行され、同日から利用希望者の申請を受け付けます。
簡単にどういう制度か解説すると、相続や遺贈によって取得した土地を国に引き取ってもらことができる制度です。
ただし、何でもかんでも国は引き取ってくれるわけではなく、以下の条件に該当していないと申請自体受け付けてもらえません。
< 申請条件 >
・国に引き取ってもらいたい不動産に複数の所有者がいる場合は、共有者全員が同意していること。(共有者の中に、一人でも相続等で取得した人がいれば申請可能)
・土地の上に建物が存在していないこと。(更地でなければいけない)
・抵当権などの担保権や、借地権・地上権・賃借権など使用及び収益を目的とする権利が設定されていないこと。
・土壌汚染対策法の規定する特定有害物質に汚染されていない土地であること。
・隣地との境界が明らかなこと。
・所有権などについて争いがないこと。
さらに、申請自体が受理されても、以下に該当する場合は承認されない場合があります。
< 承認不可要件 >
・崖がある土地のうち、管理するのに多額の費用や労力を必要とするもの。
・土地の管理や処分の邪魔になる工作物・車両・樹木などがある土地
・隣地の所有者やその他の者と裁判しなければ、管理や処分することができない土地
・上記以外の土地でも、管理や処分するのに多額の費用や労力を必要とする土地
すごくざっくり要約すると、何にも使われておらず、何の争いごともなく、何にも存在していない更地でないと引き取ってくれないということになります。
さらにさらに、引き取ってもらえたとしても費用がかかります。費用は10年分の管理費相当額を支払わなければいけません。
この他、建物がある場合は自己負担で建物を解体する必要があるなど、土地によっては引き取ってもらうのにかなりの費用を要する場合があります。
あまりに高額な費用を要する場合は、制度自体利用できない可能性もありますし、可能であったとしてもメリットがそこまでない場合も想定されます。
まとめ
< 相続した売れない物件を処分するとき有効な、4つの方法 >
・物件所在地の不動産仲介会社に売却を依頼する。
・自治体の空き家バンクに登録する。
・不動産の無償譲渡マッチングサイトに登録する。
・国に引き取ってもらう(23年4月以降)。
相続した田舎の家・土地などが売れない場合は、同時に色々な方法を試すことが有効です。
また、物件の状態が悪くなる前に、早めに売却・処分活動に取り掛かることが重要です。
今後地方では、人口減少が進みますます売却困難になる可能性があります。人口が減少する街では何が起きるのか?海外の事例をもとに、日本でも起こることを予想した記事もありますので、興味のある方はご覧ください。