相続した田舎の実家や土地が売れなくて困っている…
売れない土地を手放したい、処分したい!
空き家の管理が大変…
そんな方のために、田舎にある実家や土地の上手な処分方法を解説します。
不動産は持っているだけで固定資産税がかかるし、手入れをしないと雑草や樹木が伸び放題、建物や塀が壊れて近隣の人に怪我させてしまう危険性や、苦情が入る可能性もあります。
このまま売れない場合どうなるのだろう…?さっさと処分してしまいたい…不安はつのるばかりですが、残念ながら田舎の不便な場所にある不動産は、簡単には売れません。
なぜなら多くの人は勘違いしているからです。
相続した田舎の実家や土地を売却・処分しようとするとき、都会の物件と同じような売り方ではダメなんです!
<相続した売れない実家を処分するとき有効な7つの方法>
・物件所在地の不動産仲介会社に売却を依頼する。
・不動産買取業者に買い取ってもらう。
・自治体の空き家バンクに登録する。
・不動産の無償譲渡マッチングサイトに登録する。
・相続放棄する。
・国に引き取ってもらう(23年4月以降)。
・有料の不動産引き取りサービスを利用する。
相続した田舎の実家家や空き家、土地にはそれに合った売り方・処分方法があり、多角的なアプローチと、早めの対応が有効です。
元不動産仲介会社勤務の宅建士が、田舎の家や土地を処分する方法を解説します。
田舎の家・土地が売れない理由
そもそもなぜ田舎の家や土地は売れないのでしょうか?
原因を知ることで解決策が見えてきますので、まずは田舎の家・土地が売れない理由を解説します。
売れない主な理由は以下になります。
・ 人口が減っており、需要が少ない
・ 建物の老朽化や敷地に草が生い茂るなど、物件の状態が悪い
・ 田舎の家や土地を扱う不動産会社が少ない
・ 維持費や管理の手間がかかる
・ 売り出し価格(値付け)が相場より高い
それぞれ解説します。
売れない理由1 人口が減っており、需要が少ない
日本は、2008年の1億2808万人をピークに人口が減少し始め、特に地方の人口減少率が大きくなっています。
これは単純に不動産を購入したい人が減っている = 需要の減少を意味します。
それに対して、不要となった家や土地が増える = 供給の増加も起きています。
売り物件の供給が増えるとともに、購入希望者が減少するというのが日本の現状ですので、今後も人口減少が進むにつれて、田舎の家や土地はますます売れづらくなることが予想されます。
売れない理由2 建物の老朽化や敷地に草が生い茂るなど、物件の状態が悪い
地方は代々家を引き継いでいることが多かったり、新しく家を建てることも少ないので、家の築年数が古い傾向にあります。
また、地方は都市部に比べて敷地が広いことが多いので、人が住まなくなったり管理をサボるとすぐに雑草が生い茂ってしまいます。
ここで一つ冷静に考えてみて欲しいのですが、建物がボロボロで草木が生い茂っている物件を欲しいと思う人がいるでしょうか?
都市部であっても、このような状態で家を売りに出したら、一般の人はよほど安くない限り買わないでしょう。
一般的に家を売りに出す際は、少しでもよく見せるために家を掃除したりするのが普通ですが、田舎の家や土地であってもこういった努力は同様に必要です。
売れない理由3 田舎の家や土地を扱う不動産会社が少ない
人口が少ない場所では不動産の取引も少ないので、不動産会社の数も少ない傾向にあります。
また、田舎の家や土地を売りに出す際は、相続後などが多く、所有者は都市部に住んでいることも多いです。
しかし、都市部の不動産会社は田舎の物件を取り扱わないことが多いです。
さらに追い打ちをかけるのが、田舎の物件は価格が低いので、不動産仲介会社からすると骨折り損のくたびれ儲けになることが多く、対応可能な不動産会社であっても積極的には取り扱っていないことがほとんどです。
売れない理由4 維持費や管理の手間がかかる
不動産は所有していると、毎年固定資産税や都市計画税などの税金を払う必要がありますし、戸建や土地の場合、定期的に草刈りなどをする必要があります。
また、マンションでは、管理費や修繕費を徴収されます。
田舎に安く家を購入して、たまに遊びに行くのもいいかも!なんて思って、田舎の空き家やリゾートマンションなどに興味を持つ人もいますが、維持費や管理に手間がかかることを知ると躊躇することも多いです。
売れない理由5 売り出し価格(値付け)が相場より高い
実家が都市部ではなく田舎にある場合は、そもそも売却事例などが少なく、売り出し価格をいくらくらいにするのか不動産仲介会社でも、わかりかねることがあります。
また、地方の物件を物件の近くの不動産会社ではなく、都市部の大手不動産仲介会社などに売却を依頼した場合も同様に、相場がわからないので相場とかけ離れた価格で売り出してしまい、長期間売れないことがあります。
相続した売れない実家・土地を売却するときの心得
田舎の物件など人気がない不動産の売却は、都市部の一般的な物件の売却と同じようにはいきません。まずは、その点を認識して下さい。
それがわかっていないと、売却できなかったり、処分するまでに余計な時間や金銭的コストがかかってしまう可能性があります。
売れない家や土地をうまく売却するための心得は、以下の4点です。
・欲を出さない
・なるべく早く行動する
・いろいろな方法を試す
・時間がかかるのが普通
欲を出さない
田舎など人気のない過疎地の不動産は、【タダでも処分できればラッキー】くらいの考えを持つことが大事です。
不動産は所有しているだけで、様々なコストがかかってしまいます。
また、田舎の不動産は人気がないですし、都市部に比べると人がいないので、商談に発展する可能性がそもそも少ないのです。
商談または、タダ同然でも引き取りたいという人が現れたら、絶好のチャンスと見て欲張らずに処分しましょう。
よくいるのが、田舎の物件でも売り出したら割とすぐ問合せがあり、もっと高く売れるのではないか?と欲を出してしまう人です。
不動産は売り出してから1ヶ月以内が一番反応があります。なので、売り出してすぐの反応がその後も続くことはなく、どんどん問い合わせは減っていきますので、欲張らずに最初の問い合わせで処分するつもりでいましょう。
なるべく早く行動する
田舎の家や土地でも、人が最近まで住んでいたなら使えますし、家も庭も手入れされていてきれいな状態であることが多いです。
しかし、その後放置しておくと、敷地には急速に雑草が生い茂り、樹木は伸び放題、建物や外構は朽ちはじめ動物や虫が住み着きます。時間が経過するほど見た目も中身も悪化していき、管理や手入れの手間やコストももかかるようになります。
いくら田舎の物件と言えども、見た目や中身がきれいな方が売れやすいのは間違いありません。
使い道がないなら、なるべく早く売却活動に取り掛かりましょう。
いろいろな方法を試す
需要の多い都市部の不動産なら、不動産仲介会社に売却を依頼しておけば、自分達は特に何もしていないくても家は売れます。
しかし、田舎の物件は、都市部の大手不動産仲介会社では対応してくれないことが多いです。また、物件のある場所の地元の不動産会社は、近隣の狭い範囲でしか売却のノウハウがないことも多く、売却する際に一概にここにだけ頼んでおけばいいというのがありません。
なので、【多角的なアプローチが最も効果的】となります。
具体的な処分方法については、後ほど解説致します。
時間がかかるのが普通
人気のない地域や人口の少ない地域の不動産は、売れるまで時間がかかるのが普通です。
長期的な目線で取り組むことに加えて、早めの行動が大切です。
不動産が売れるまでの、一般的な流れ
私は以前不動産仲介会社で働いていた経験がありますので、不動産が売れていく過程をたくさんみてきました。
一般的には物件を売りに出してから、売れるまで以下のような流れになります。
1,仲介会社に査定してもらう
2,売りに出す(チラシや不動産ポータルサイトへ物件情報の掲載)
3,売れなかったら値下げ
4,それでも売れなかったら、さらに値下げする
5,それでも売れず、問い合わせも来ない場合は、不動産買取業者に査定依頼
6,不動産買取業者が買取
7,買い取ってさえもらえない場合は、無償譲渡
8,無償譲渡でも引き取り手がいない場合は、有料の不動産引き取りサービス
売れるまでの流れについて、もっと知りたいという方には、上記内容について詳しく解説している記事もありますので、そちらをご覧ください。
⇒ 売れない家はどうなる?不動産仲介会社で見てきた、売れ残った物件が辿る道
地方でも、それなりに人が住んでいる場所であれば上の流れと同じような方法で、売却は可能だと思います。
しかし、田畑や山林が広がっているような場所では、売却の難易度がぐっと上がります。
その場合は、一般的な売却方法では売れない可能性がありますので、以下で解説します。
相続した田舎の家・土地の処分方法
売れない家・土地を売却(処分)するには、何か一つの方法だけに頼っていては、時間がかかるだけで、いつまでたっても売れないなんてことになりかねません。
その間にも、物件の状態は悪化するし、固定資産税などの金銭的な負担や管理の手間かかります。
また、総務省が5年ごとに公表しているの住宅・土地統計調査によると、日本では空家数がどんどん増加しており、売りに出る物件が増えることで、ますます空き家の処分は難しくなっていくものと思われます。
そうならないためにも、なるべく早く処分するのが重要で、そのためには色々な処分方法を同時に進めるのが有効です。
以下で同時に進めたい、7つの売却・処分方法をご紹介します。
< 相続した売れない物件を処分するときに有効な、7つの方法 >
・物件所在地の不動産仲介会社に売却を依頼する。
・不動産買取業者に買い取ってもらう。
・自治体の空き家バンクに登録する。
・不動産の無償譲渡マッチングサイトに登録する。
・国に引き取ってもらう(23年4月以降)。
・相続放棄する。
・有料の不動産引き取りサービスを利用する。
1,仲介会社にお願いする
地方の空き家を売却する場合は、物件の近くにある不動産仲介会社に相談しましょう。
なぜかというと、日本の不動産仲介会社は大手でも全国展開しておらず、基本的には都市部にしか店舗がありません。
また、売却する都道府県に店舗があったとしても、フランチャイズ店やグループの別会社であったりして、横のつながりがほとんどないに等しい状態です。
例えば、自分は東京に住んでいて、静岡の空き家を相続したから売りたい場合、東京にも静岡にも店舗がある不動産会社なら、東京の店舗の人に相談すれば静岡の店舗の人が色々現地で動いて売却してくれるかも!と思いがちですが、基本的にそうはなりません。
また、大手仲介会社は、都市部の人気があり高額な物件の仲介をすることで、1回の取引で数百万円の仲介手数料を得るビジネスモデルなので、そもそも田舎の物件の売却ノウハウもないですし、地方のタダ同然、値段がついても数百万円の物件の仲介などしたくないのが本音なのです。
物件の所在地にもよりますが、売却して欲しいと頼むと普通に断られることも珍しくありません。
空き家の所在地の不動産会社まで相談に行くのは大変ですが、地元の不動産会社の方が地域の不動産に関する情報にも詳しいですし、物件の写真を撮ったり購入希望者を案内する際にも素早く対応してもらえます。
※ 注意点 ※
不動産仲介会社にお願いする場合は、媒介契約を結ぶことになります。媒介契約には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があるのですが、このうち専属専任媒介契約の場合、自己発見取引(自分で買主を見つけて取引すること)が不可となっているので、後ほどご紹介する方法を同時に行うとトラブルになる可能性があります。
媒介契約する際は、一般媒介契約か専任媒介契約にしましょう。
2,不動産買取業者に買い取ってもらう
地方の過疎地にあるような物件は、ほとんどの不動産会社が買い取ってはくれません。
しかし、売るのが困難な物件でも、積極的に買い取っている不動産買取業者も存在しています。
地方の空き家、ボロ家などの買取は、【訳アリ物件買取PRO】を運営している 株式会社Alba Link が有名です。
平成23年に設立された業歴10年以上の不動産会社で、全国で年間200件以上の買取を行っている実績のある会社です。
東京に本社がありますが、大阪や千葉、埼玉、茨城、大阪、名古屋などにも支店があります。
普通の不動産買取業者が買い取らないような人気のない物件、訳アリ物件などを積極的に購入している、全国的にも珍しい業者です。
あまり一般の方には馴染みのない会社ですが、不動産業界の人の間では、一般の方には売れないような物件を買い取ってくれる業者として知られています。
私も仲介会社で働いていた時、たまに相続した地方の物件の売却相談をされることがあったのですが、自社では対応できなかったので、紹介していました。
日本全国対応しており、買取査定は無料です。
全国対応してるって言ったって、どうせ都市部にある物件だけでしょ?なんて思うかもしれませんが、下の表をご覧ください。公表されている2022年6月13日現在の買取実績です。
公開されている買取実績を見ると、都市部ではない場所にある物件でも積極的に買い取っていることがわかります。
田舎にある物件だからってあきらめる必要はありません。仲介会社に売却を断られるような場所にあっても大丈夫です。
しかも雑草が生い茂っていたり、残置物などがあっても買い取り実績があります。
下の画像は、実際に訳あり物件買取プロが買い取った物件ですが、正直言ってかなり状態が悪い物件です。
買い取ってもらうとしても掃除したり、家具やゴミなどを処分するのは大変だし面倒だな…と思うような物件でも、そのまま処分可能です。
また、業者買取の場合、買取価格に合意すればすぐに売却できます。
人口減少が進む日本では、時間が経つほど売れづらくなることは間違いないと思いますので、早めの行動が重要です。
30秒ほどの簡単な入力をするだけで、買取査定が依頼できますので、早く処分したい方は査定依頼してみることをお勧めします。
買取価格を知りたい方はコチラ ⇒ 【訳アリ物件買取PRO】
不動産買取が不安な方や、訳アリ物件買取プロについてもっと詳しく知りたいという方は、以下の記事をご覧ください。
>>【訳あり物件買取プロ】は安心して利用できる?評判、口コミ、運営会社を調査しました!
3,空家バンクに登録する
空き家バンクに登録するのも有効な手段の一つです。
空き家バンクという名称は聞いたことがあるけど、どのようなものかよくわからない…という方の為に、空き家バンクとは何なのか簡単に解説します。
【空き家バンク】とは、
その物件が所在する自治体の制度で、空き家の売却または、賃貸などを希望する所有者から申込みを受けた情報を、その物件所在地への定住等を目的として空き家の利用を希望する人に対して、紹介する制度をいいます。
空き家バンクへの登録には費用はからず、無料で利用可能です。ただし、仲介業者を介して契約に至った場合は、仲介手数料等が発生します。
上記の通り、自治体の制度なので安心して利用できます。(※全ての自治体が空き家バンクを設置しているわけではありません。)
以前はそれぞれの自治体が、個々に情報を開示していたので、情報が広まりづらい・開示情報が自治体によって違うなどの課題があった為、現在は国土交通省が【全国版空き地・空き家バンク】をつくりました。
これには、不動産情報サイト【ホームズ】を運営する㈱LIFULL、【アットホーム】を運営しているアットホーム㈱も参加しており、それぞれのサイトに全国の空き家を検索できる特設ページがあります。下にリンクを貼っておくので、どんなものか気になる方はご覧ください。
国土交通省の発表によると、全国版空き地・空き家バンクの運用開始後、で約6,000件もの成約実績(令和2年10月時点)があるとのことですので、是非とも利用したいところです。(自治体によっては、空き家バンクは設置しているが、全国版空き地・空き家バンクにはまだ参加していないところもあります。)
近年、都市部からのどかな暮らしや自然の中での生活を求めて、地方移住を希望する人が増えています。コロナ禍によってテレワークが推進されるようになって、地方にいても仕事ができる人が増えているのも要因のひとつだと思われます。
空き家バンクに物件の情報を登録しておくと、そのような人達が地方自治体に移住の相談をしにきた際、物件を紹介してくれます。
空き家バンクを設けている自治体によっては、地元の不動産業者などと提携していて、空き家の売却支援を行っている例もあります。
心得の部分でも記載しましたが、空き家を相続してから時間が経過し、草木が生い茂り建物が朽ち始めているような状態だと、住みたいと思う人も減るので、空き家バンクで紹介されても選んでもらえる可能性が低くなってしまいます。
なるべく物件がきれいで住居として利用可能なうちに、登録しましょう。
4,空き家無償譲渡サイトに登録する
先に紹介した2つの方法は、基本的に有償での譲渡を前提としています(一部除く)。物件の立地や、状態によっては有償では残念ながら買い手がつかないこともあります。
しかし、買い手がつかない物件でも、無償なら欲しい!という方がけっこういたりするのです。
そして、物件の無償譲渡を支援するサービスも存在しています。「みんなの0円物件」というマッチング支援サイトです。
こちらのサイトによると、
・2019年7月のサービス開始後、これまでに140件ほどの物件登録があり、8割以上がマッチング成立しているという実績。
・ひとつの物件に対しての問い合わせは平均数十件以上あり、最短1日でマッチングした事例もあり(マッチングまでの平均日数 15日)。
利用者からは「売れなくて処分に困っていた実家をすぐに手放すことができた」など、高い評価を得ています。
・様々な自治体とも連携協定を締結しており、地方紙だけでなく全国紙やテレビ局などにも取り上げられている安心のサービス。
・サービス自体の登録・掲載料は、無料となっております。
その後は、掲載後の譲渡希望者との折衝から契約、所有権移転手続き等を誰が行うかで2つのプランがあります。
1、全て自分で行う場合
最初から最後まで利用料は、全て無料
2、全て運営者側におまかせする場合
所有権移転完了時に、150,000円(税別)がかかります。
1のプランは、とにかく安く済ませたい・対応する時間があるという方にはメリットがありますが、無償譲渡といえども、契約ごとです。
不動産は敷地の境界線や、建物・土地の瑕疵(何かしらの問題点)などで後々揉めることも珍しくありません。そう言った問題が起きないような内容の契約書を、自分で作成する必要がありませんので、おまかせプランが個人的にはお勧めです。
掲載無料ですので、以下に該当する方はご登録することをお勧めします。
・既に売りに出しているが買い手がつかなくて困っている
・0円でもいいから手放したい
・毎年固定資産税などの費用が負担となっている
・物件の状態が悪い
・不動産仲介会社に仲介を断られた
・とにかく早く処分したい!
5,国に引き取ってもらう(相続土地国庫帰属法2023年4月27日から)
2021年4月に、相続などにより取得した土地を手放すための制度に関する法律「相続土地国庫帰属法」が成立しました。
2023年4月27日から施行され、同日から利用希望者の申請を受け付けます。
簡単にどういう制度か解説すると、相続や遺贈によって取得した土地を国に引き取ってもらことができる制度です。
ただし、何でもかんでも国は引き取ってくれるわけではなく、以下の条件に該当していないと申請自体受け付けてもらえません。
< 相続土地国庫帰属制度 申請条件 >
・国に引き取ってもらいたい不動産に複数の所有者がいる場合は、共有者全員が同意していること。(共有者の中に、一人でも相続等で取得した人がいれば申請可能)
・土地の上に建物が存在していないこと。(更地でなければいけない)
・抵当権などの担保権や、借地権・地上権・賃借権など使用及び収益を目的とする権利が設定されていないこと。
・土壌汚染対策法の規定する特定有害物質に汚染されていない土地であること。
・隣地との境界が明らかなこと。
・所有権などについて争いがないこと。
さらに、申請自体が受理されても、以下に該当する場合は承認されない場合があります。
< 承認不可要件 >
・崖がある土地のうち、管理するのに多額の費用や労力を必要とするもの。
・土地の管理や処分の邪魔になる工作物・車両・樹木などがある土地
・隣地の所有者やその他の者と裁判しなければ、管理や処分することができない土地
・上記以外の土地でも、管理や処分するのに多額の費用や労力を必要とする土地
すごくざっくり要約すると、何にも使われておらず、何の争いごともなく、何にも存在していない更地でないと引き取ってくれないということになります。
さらにさらに、引き取ってもらえたとしても費用がかかります。費用は10年分の管理費相当額を支払わなければいけません。
この他、建物がある場合は自己負担で建物を解体する必要があるなど、土地によっては引き取ってもらうのにかなりの費用を要する場合があります。
あまりに高額な費用を要する場合は、制度自体利用できない可能性もありますし、可能であったとしてもメリットがそこまでない場合も想定されます。
詳しくは、法務省が相続土地国庫帰属制度の解説書を公表しているので、そちらをご覧ください。
6,相続放棄する
相続開始を知ってから3か月以内であれば、相続放棄することも可能です。
ただし、注意点としは相続放棄は田舎の家だけ放棄して、現金などは相続するといったことはできず、資産となるようなものも放棄する必要があります。
また、ご自身が相続放棄した場合それで終わりではなく、相続権が相続順位が低い人に移ることになりますので、親戚が相続することになる可能性があります。
相続順位が低い遠い親戚まで全員が相続放棄しなければ、親戚の誰かが本人がよくわからないうちに相続してしまい、迷惑をかけてしまうなんてことにもなりかねませんので、注意が必要です。
7,有料の不動産引き取りサービスを利用する
売れない、タダでも欲しい人がいない、自治体にも寄付を断られるといった場合、最終的に残る方法は、有料の不動産引き取りサービスを利用することです。
不動産の所有者側がお金を払って引き取っても貰うのです。
引き取り料金は不動産市況や物件によりますが、固定資産税の20~80年分と管理にかかる費用20~40年分で、その他所有権移転登記費用などがかかります。
数十万円支払うことで、税金や維持費だけかかるどうしようもない不動産から解放されます。
田舎の実家・土地を所有し続けるデメリット
既に田舎の実家・土地を処分するのに、色々な方法を試している人はなんとかなるかもしれませんが、遠方にある、家財道具などが大量に残っている、なんとなく思い出があるから処分しづらいなどの理由で、何もしないと色々な問題が起きる可能性があります。
田舎の実家・土地を所有し続けるデメリットは以下のようなものがあげられます。
・時間が経てば経つほど処分しづらくなる
・維持管理費がかかり続ける
・固定資産税や都市計画税が急激に増額される可能性がある
・建物や塀などが崩れて近隣に迷惑をかけ損害賠償請求される可能性がある
・行政代執行で強制的に解体され、多額の解体費を請求される可能性がある
それぞれ解説します。
時間が経てば経つほど処分しづらくなる
建物は時間が経てば経つほど老朽化し、朽ち果てていきます。特にだれも住んでいない空き家は傷みやすいです。
土地は時間が経っても老朽化するようなことはありませんが、草木が生い茂りジャングルのような状態になってしまいます。
このような状態になると、例え家がまだ使えたとしても購入する人はまずいません。また、雑草は刈り取れば問題ありませんが、樹木は伐採するのにも処分するのにもかなりお金がかかります。
また、日本は既に2008年から人口が減少し始めており、特に田舎の方が急激に人口が減少しています。つまり田舎ではいらない家を処分する人がどんどん増えているのに対して、家を購入したいと思う人がどんどん減っている状態にあります。
このようなことから、時間が経てば経つほど田舎の家は処分しづらくなりますので、早めに売却・処分に取り掛かった方がいいでしょう。
維持管理費がかかり続ける
不動産は所有しているだけで、固定資産税・都市計画税などの税金の他、定期的に雑草などを処分する場合は草刈り費用、ライフラインを利用できるようにしている場合は、電気や水道料金、マンションの場合は、管理費や修繕費がかかり続けます。
たまに自分で行って掃除などをする場合も、交通費がかかり、遠方の場合は結構な負担になります。
固定資産税や都市計画税が急激に増額される可能性がある
平成27年(2015年)から空家対策特別措置法という法律が施行され、以下の条件に該当する家は【特定空家】に該当し、勧告を受け賦課期日(1月1日)までに勧告に対する必要な対応をたらなかった場合、固定資産税・都市計画税が急激に増額される可能性があります。
・そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
あまり知らない人も多いですが、一般的な規模の住宅が建つ土地は固定資産税が6分の1、都市計画税が3分の1に減額されています。
特定空家に指定されると、この特例措置が適用されなくなる場合がありますので、土地の固定資産税が6倍、都市計画税が3倍になり、合計した税額は3.6倍に跳ね上がります。
建物や塀などが崩れて近隣に迷惑をかけ損害賠償請求される可能性がある
長年放置された家や塀は、雨風などで朽ち果て、倒壊するなどして隣地や通行人にケガや損害を与える可能性があります。
その場合、所有者はもちろん管理責任を問われますので、治療費や修繕費、損害賠償などを請求される可能性があります。
行政代執行で強制的に解体され、多額の解体費を請求される可能性がある
空き家の状態があまりにも悪く、周囲に危険が及ぶ可能性のある物件については、所有者が何も対策を行わない場合、行政が所有者に代わって建物の解体処分を行い、かかった解体費用を所有者に請求します。
実例をご紹介すると、滋賀県野洲市で老朽化したマンションが放置された挙句、行政代執行により建物が解体され、所有者には解体費が請求されました。
1972年築、総戸数9戸、鉄骨造3階建て、【美和コーポ】という名称の分譲マンションです。
下の写真は、解体される前の実際の写真です。廃墟化が進み過ぎて壁さえありません。
交通量の多い道路に面していて危険なことや、発がん性のあるアスベストを含む建材が使用されていることなどから、2020年7月に行政代執行で、市が所有者に代わって解体しました。
解体費用の総額は約1億2千万円。
所有者は1人当たり、市から約1,300万円請求されています。
特定空家に指定されてる家は増えており、行政代執行で解体される事例も全国で増えており、国土交通省によると令和2年3月末時点で、全国で特定空家の数は17,636物件、行政代執行で解体された建物は260件にものぼります。
ここまでくると、誰も得をしません。こうなる前に売却や処分に取り組むことが重要です。
処分したいならまずは不動産業者買取業者に査定してもらうのがおすすめです。手元にお金が残る可能性もあります。
買取価格査定を依頼してみるならコチラ ⇒ 【訳アリ物件買取PRO】
本当にどうしようもない物件の場合は、有料の不動産引き取りサービスを利用するのもありかもしれません。
まとめ
< 相続した売れない実家を処分するとき有効な7つの方法 >
・物件所在地の不動産仲介会社に売却を依頼する。
・不動産買取業者に買い取ってもらう。
・自治体の空き家バンクに登録する。
・不動産の無償譲渡マッチングサイトに登録する。
・国に引き取ってもらう(23年4月以降)。
・相続放棄する。
・有料の不動産引き取りサービスを利用する。
相続した田舎の家・土地などが売れない場合は、同時に色々な方法を試すことが有効です。
また、物件の状態が悪くなる前に、早めに売却・処分活動に取り掛かることが重要です。
>【不動産を高く売却する方法】家や土地、マンション、収益物件が高く売れる条件はこれだ!
今後地方では、人口減少が進みますます売却困難になる可能性があります。人口が減少する街では何が起きるのか?海外の事例をもとに、日本でも起こることを予想した記事もありますので、興味のある方はご覧ください。