マンションを購入または賃貸するとき、できるなら騒音トラブルに悩みたくないですよね?でもマンションの防音性能なんて実際に住んでみないと、静かかどうかわからない…と思っていませんか?
実は、住まなくても防音性能の高いマンションを見分ける方法があるんです!
マンション住まいの一番のトラブルは、今も昔も騒音問題です。自分たちが被害者になることもありますが、下の階の人から苦情を言われてしまう可能性もあります。騒音トラブルで訴訟にまで発展してしまった事例もあります。
そんなことにならないために今回は、防音性能の高いマンションの選び方・見分け方を解説します。
これを読めば、住む前に構造上防音性能の高いマンションかどうかわかりますので、事前にトラブルを避けられる可能性が高まります。
マンションの防音性能は、建物の構造に大きく関係します。なので遮音性の高い構造になっているマンションを選びましょう!
マンション暮らしで聞こえてくる音の種類
マンションで暮らしで聞こえてくる騒音には、建物の外から聞こえてくる音と、中から聞こえてくる音があります。
外から聞こえてくる音は、空気伝達音と言い、鉄筋コンクリートでできているマンションの場合、かなり大きな音なら壁を伝わっても聞こえてきますが、これらの大部分は窓や換気口から室内に聞こえてきます。
建物の中から聞こえてくる音は、空気伝達音と、床や天井、壁などが直接振動して聞こえてくる固体伝達音があります。
マンションの騒音トラブルで特に問題になりやすいのは、上の部屋から響く固体伝達音です。
この音は、マンションの床(下の階からすると天井)に直接衝撃が加えられて振動することにより、音が伝わるのもので、椅子を動かしたり、スプーンなどを床に落とした時に聞こえるコツン、コツコツのような音を軽量衝撃音、子供が走り回るときに聞こえるドスンドスンのような音を、重量衝撃音と言います。
軽量衝撃音は、フローリングなどの固い材質の床だと響きやすいのですが、表面がやわらかい厚目のカーペットを敷くなどの対応で、後から対策することも可能です。
それに対して重量衝撃音は、建物の構造による部分が大きいので、後から改善することは難しいです。
だからこそ、建物の構造上音が伝わりにくくなっているマンションを選ぶことが、重要です。
防音性能の高いマンションを見分ける、5つのチェックポイント
それでは、具体的にどのような構造のマンションが、防音性能が高いのか5つポイントを解説します。
< 5つのチェックポイント >
□ 戸境壁が遮音性の高い造りか
□ 床や壁のコンクリートが厚いか
□ 梁間面積が小さいか
□ 水回りが集約された設計になっているか
□ 窓が遮音性の高いものか
チェックポイント1 戸境壁が遮音性の高い造りか?
戸境壁とは、隣の家と自分の家の境にある壁のことです。
マンションの壁は、全てコンクリートでできていると思っている方も多いと思いますが、そうとは限りません。
マンションの戸境壁は主に以下の3つの構造に分けられます。
1、コンクリートの壁に、クロスを直接貼り付けているもの。
2、コンクリートの壁に、接着剤で直接石膏ボードを貼り付けているもの。
3、コンクリートはなく、鉄骨の間柱に石膏ボードを貼り付けているもの。
1、コンクリートの壁に、クロスを直接貼りつけているもの
1番の工法は、コンクリートの厚さが厚いほど、遮音性が高くなります。
厚さが180~200mmあれば、遮音性が高いですが、120mm程度しかない場合は、あまり遮音性は高くありません。
画像は、三菱地所のザ・パークハウス赤坂タワーレジデンスの、戸境壁の説明から引用させて頂いたものですが、戸境壁がコンクリートでできており、厚さも200mm以上なので、十分な遮音性を持っていると言えます。
クロスを貼り付けるコンクリートがきれいじゃなければできない工法なので、この工法で建てられている物件は、工事の質も高い傾向にあります。
2、コンクリートの壁に、接着剤で直接石膏ボードを貼り付けているもの
2番の工法は、120mm程のコンクリートの壁に、団子状にした接着剤で石膏ボードを貼り付けたもので、石膏ボードとコンクリートの壁の間に少し隙間ができます。
この隙間で音が響く【太鼓現象】とよばれる現象が起きたり、石膏ボード~コンクリートの壁がつながっているので、振動が伝わったりして、遮音性が低下します。
コストが低く、施工が簡単なため多くのマンションで行われてきました。
3、コンクリートはなく、鉄骨の間柱に石膏ボードを貼り付けているもの
タワーマンションの戸境壁は、軽量化のためにほとんどこの造りになっています。
この工法は、造りによって遮音性に大きな違いが出ます。
遮音性の低いものは、鉄骨の間柱の間に吸音材を入れて、その両側に石膏ボードを二重に貼るもので、壁全体がつながっているので振動が伝わりやすいのが特徴です。
今どきのマンションでは、戸境壁ではほとんど使われていませんが、自分の家のリビングと洋室の壁などにはよく使われています。
遮音性の高いものは、鉄骨の間柱をジグザグに配置し、その間には吸音材を挟み、二重または三重にした石膏ボードで挟んでいます。
この工法だと、コンクリートの壁より遮音性が高い場合があります。
< 確認方法 >
新築マンションだと、パンフレットや物件の販売用ホームページの【構造】という部分に、記載されている場合があります。
書いてなくても、営業の方に聞けば教えてくれます。
中古マンションで確認するには、以下の方法があります。
・売主が販売時のパンフレットを持っていたら見せてもらう
・新築販売時のホームページが残っていたらそれで確認する
・マンションの管理人室に新築時の資料があれば見せてもらう
・分譲会社に直接問い合わせる
親切な仲介会社の営業マンであれば、頼めば調べてくれるかもしれません。
戸境壁が厚いコンクリートでできていれば、防音性が高いマンションです。
チェックポイント2 床や壁のコンクリートが厚いか?
マンションの音は、鉄筋コンクリートが振動することで伝わるので、鉄筋コンクリートが分厚い方が振動しづらく、防音性能が高くなります。
築年数の古いマンションの場合、床のコンクリートの厚さ(スラブ厚という)が150mmくらいしかないものがあります。
なので、最近流行りのリノベーションマンションは、室内が新築同様のきれいな状態になっていますが、スラブ厚を変えることはないので、遮音性が今どきのマンションより劣る可能性が高いです。
現在の新築マンションでは、スラブ厚は200mmくらいあるのが普通ですが、防音性能を考慮したマンションだと、もっと分厚くなり250~300mm以上あるものもあります。
少なくとも、スラブ厚が200mm以上、できればもっと分厚い物件を選びましょう。
確認方法は、戸境壁の確認方法と同じです。
チェックポイント3 梁間面積が小さいか?
マンションの防音性能には、スラブ厚が厚い方がいいと記載しましたが、実はスラブ厚が厚いだけでは防音性能は期待できません。
梁間面積が深く関係してきます。
【梁】(はり)とは、水平方向に天井や床を支える部材のことです。
【梁間面積】とは、梁で囲まれている面積のことです。下の写真で赤い四角で囲まれている部分のこと。
(壁式構造と言われる壁で建物を支える構造の場合、壁が梁の役目も果たす)
梁間面積が大きいと、スラブ厚を厚くしないと防音性能が下がります。
逆に梁間面積が小さいと、スラブ厚が薄くても防音性が高かったりします。
例えるなら、太鼓の叩いて音を出す部分の面積が大きい方が音が大きく、叩く部分を小さくすると音が鳴りづらくなるのと同じです。
具体的な数値でいうと、一般的なスラブ厚200mmの場合、梁間面積は30㎡以下だと防音性能が高いです。3LDK70~80㎡のマンションの場合、位置にもよりますが小梁が2本あれば安心です。
ボイドスラブ工法という、小梁をなくした上にスラブ厚を厚くできる工法で建てられたマンションもあります。
< 確認方法 >
梁は新築マンションの場合、間取り図上に点線で表示されていることがありますが、中古マンションや賃貸マンションの場合、仲介会社が作成する間取り図には梁の位置の記載は基本的にありません。
その場合は、現地にて確認するか、新築時の図面を売主が持ってないか確認し、あれば見せてもらいましょう。
間取り図と梁の位置で、計算してみるしかありません。
チェックポイント4 水回りが集約された設計になっているか?
マンション生活で聞こえる音の一つに、生活排水の音があります。
最近のマンションでは少なくなりましたが、ときおり寝室の上や隣に、上階や隣の家の浴室やキッチンなどがあって、音が聞こえてくる場合があります。
マンション購入の際は、上下左右の部屋の間取り図を見て水回りの位置を把握しましょう。
例えば↑の写真のようなマンションの場合、上から下まで縦の部屋は同じ間取りの可能性が高いです。
なので、上下の部屋と自分の部屋は、水回りの位置が同じだと思われます。
しかし、上のマンションは同じ階に3部屋あります。
このような場合、2部屋は水回りが戸境壁を挟んで隣同士になっていても、もう一部屋はそうすることができません。
マンションの場合、水回りを窓際に設置することはほぼないので、部屋の中心の一番外側から離れた位置になっていることが多いです。
なので、このマンションの真ん中の部屋は、寝室やリビングなどと、隣の家の風呂場などが隣接している可能性があります。
そのような造りだと、夜寝ているときに水をバシャバシャするような音が聞こえてくるかもしれません。
< 確認方法 >
新築の場合、上下左右の間取り図を見せてもらいましょう。
中古の場合は、仲介会社の人に調べてもらいましょう。
仲介会社は、東京カンテイという会社から、過去の分譲マンションの間取りを取り寄せることができます。(有料でやってます)
チェックポイント5 窓が遮音性の高いものか?
窓は壁に比べると遮音性が格段に低いです。部屋の外部から入ってくる音は、窓によるものが大きいです。
窓の遮音性に影響するのは、ガラスの厚さや構造と、サッシの気密性です。
マンションは、大きな道路沿いや駅の近くに建っていることが多く、車や電車、通行人などの発する音がうるさいこともあります。
特に幹線道路や高速道路沿いの物件は四六時中車が通行するので、防音性能の低いマンションだと騒音問題に悩まされます。
そこで、幹線道路沿いなどできちんと騒音対策された物件は、窓が二重窓になっています。
二重窓は通常の窓に比べて遮音性が格段に高いだけでなく、断熱性も高くなります。
二重窓でなくても、ガラスが厚い方が薄いものに比べて、音が伝わりにくくなります。
ガラスの厚さの合計が同じ厚さでも、複層ガラス(二枚のガラスの間に空気の層があるもの) ⇒ 単板ガラス(普通の1枚のガラス) ⇒ 合わせガラス(2枚のガラスを張り合わせたもので、防音考慮したものには、ガラスの間に防音フィルムが挟まれています。)の順に遮音性が高くなります。
古いマンションだと窓が薄いガラス一枚の場合があります。このような窓だと防音性能は一切期待できません。
また、サッシには防音性能の高い防音サッシがあります。
サッシから漏れてくる音は、サッシの隙間から漏れてきます。
防音サッシは、施錠すると隙間ができないようになっており、気密性、遮音性が高いのが特徴です。
特に幹線道路沿いや線路沿いのマンションを検討している場合は、新築マンションなら窓の騒音対策をどうしているのか聞いてみましょう。中古マンションの場合は、二重窓になっているか確認して下さい。
< 確認方法 >
新築の場合、分譲パンフレットなどに記載されています。
中古の場合は現地で確認するか、仲介会社の人に問い合わせましょう。
窓から入ってくる音は、構造の問題もありますが、そもそもマンション周りの環境による部分が大きいので、窓の構造だけでなく周辺環境もしっかり確認しましょう。
おまけのチェックポイント 上の住人がどんな人か確認する
構造とは関係ない部分ですが、マンション暮らしを快適に過ごす上で重要なポイントをご紹介します。
それは、購入または賃貸しようと思っているマンションの部屋の上に、どんな住人が住んでいるのか確認することです。
マンションの防音性能に関わらず、上の住人が音を出さない静かな人なのか、ドタドタうるさい住人かによって、騒音レベルは大きく異なります。
上に小さな子供が住んでいる場合や、昼間寝ていて夜起きているような仕事の人の場合、騒音トラブルに悩まされる可能性が高いです。
中古マンションや賃貸マンションの場合は、内見の際に上の階の玄関前に小さな子供がいる様子がないか(例、三輪車が置かれているなど)確認しましょう。また、管理人や大家さんに上の階はどんな人が住んでいるか聞いてみましょう。
最近では、そういった問題のある住民がいないか?何かしらトラブルを抱えた物件じゃないか?などの調査を代行してくれるサービスもございます。【トナリスク】というサービスです。
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賃貸で防音性能の高いマンションを探している人向けのアドバイス
賃貸で遮音性の高いマンションを探している方にアドバイスをすると、
分譲マンションと、はじめから賃貸用に建てられたマンションでは、防音性能は全然違います。
マンション暮らしのトラブル・クレームで一番多いのは音の問題です。
マンション分譲会社は、このことを理解していますので、基本的に防音性能に配慮した設計をしています。(最低でもこれくらいの防音性能という、設計基準があったりする)
マンション分譲会社は、マンション名に独自のブランド名をつけています。(例 パークホームズなど)
遮音性の低いマンションばかり建てていると、それが口コミで広まり、~という会社の~シリーズのマンションは、音がよく響くのでやめた方がいい!などと口コミで広まり、信用を落とします。
信用が落ちると、その後のマンションの売れ行きにも影響するので、分譲マンションは、ある程度予算の許す限りしっかりした造りにします。
しかし、賃貸向けに建てられているマンションは、事業の収益性を重視するので、土地に対してできるだけ多く部屋を詰め込みます。
収益性>信用です。(そうでない会社もありますが)
なるべく床や壁を薄くし、低コストで多くの部屋を作ることになるので、遮音性の低いマンションになります。
某大手サブリース会社の建てたアパートやマンションなんかは、典型的な例です。
もし賃貸で防音性の高いマンションを探しているなら、分譲マンションが賃貸に出されているものにしましょう。
まとめ
マンション暮らしで聞こえてくる音には、後から対策できる音と、対策が困難な音がある。
特にトラブルになりやすい足音などの重量衝撃音は、建物の構造による部分が大きいため、構造上音が響きにくいマンションを選ぶことが重要。
防音性能が高いマンションを選びたいときは、購入前に以下のポイントをチェックしましょう!
< チェックポイント >
□ 戸境壁が遮音性の高い造りか
□ 床や壁のコンクリートが厚いか
□ 梁間面積が小さいか
□ 水回りが集約された設計になっているか
□ 窓が遮音性の高いものか
< 確認方法 >
チェックポイントを確認するには、分譲時のパンフレットやホームページ、売主へ確認、現地確認などが必要です。
新築マンションを購入する際は、容易に確認できるので、必ず確認しましょう。
逆に賃貸用マンションなどは、スラブ厚などは確認が困難です。
騒音トラブルは、自分達が被害者になる場合もあれば、迷惑をかける側になってしまう場合もあります。マンションの防音性能は高いに越したことはないので、購入前にしっかり確認してましょう!
防音性能に関わらず、どんなマンションを購入していいのか悩んでいる方向けの記事もございますので、興味のある方は↓のリンクからご覧ください。