
・仲介会社に頼んで家を売り出しているけど、全然売れない……
・不動産買取を勧められたけど、なんだか怪しいし不安……
・早く家が売れないと困るけど、不動産買取についてよくわからない
そんな不安を抱えている方のために、不動産買取について、元不動産仲介会社勤務の宅建士が解説します。
この記事を読めば、不動産買取とはどんなものなのか?取引の流れや、メリット・デメリット、注意点がわかります。
不動産買取は、不動産会社に物件を買い取ってもらうことです。
早く家が売れるというメリットがありますが、仲介で一般の人に売るより売却価格が低くなるというデメリットがあります。
物件を早く確実に売りたい場合や、一般の人には売れない物件を売却する場合にオススメです。
不動産買取とは?
【 不動産買取 】とは、仲介会社を通して一般の人(業界ではエンドユーザーという)に家や土地を売るのではなく、不動産会社に買い取ってもらうことをいいます。
そして、不動産を買い取ってくれる不動産会社のことを【 不動産買取業者 】と呼びます。
不動産買取業者は、不動産を買い取ってくれるときの呼び方に過ぎないので、普段は買い取った土地に新築一戸建てやマンションを建てて販売したり、中古戸建や中古マンションを買い取ってリフォームし、再販したりしている不動産会社です。
なので、不動産買取業者と聞くと、怪しい…… と感じる方もいるかもしれませんが、普通の不動産会社ですので、警戒する必要はありません。
不動産買取には、仲介会社を通して不動産買取業者に買い取ってもらうパターンと、仲介会社を通さず不動産買取業者に直接買い取ってもらうパターンがあります。
不動産買取の種類
不動産買取には、【 即時買取 】と【 買取保証 】の2種類があります。
即時買取とは?
即時買取とは、買取業者に買取価格を査定してもらって、合意すればすぐに売買契約を結ぶことをいいます。
メリットとしては、取引が完結するまで時間がかからず早いことがあげられます。
デメリットとしては、高く売るチャンスを逃すことになります。
不動産買取と言えば、ほとんどが即時買取です。
買取保証とは?
買取保証とは、はじめは仲介で一般の人向けに売り出し、売れなかった場合、もともと提示していた買取価格で仲介会社が買い取ってくれることをいいます。
あまりやっている仲介会社は多くないのですが、大手仲介会社でいうと【東急リバブル】がやっています。
リバブルを例に、具体的にどのような仕組みか解説しますと、
・売却保証率90%上限
リバブルが査定した価格の、90%以下の価格で買い取ってくれます。買取保証額の設定は、物件の特性によって90%を上限に変わります。
・買取期日
買い取ってくれるのは、媒介契約に基づく販売期間(3ヶ月以上6ヶ月以内)が終了した後になります。
すぐにも買い取ってくれないし、ずっと売れなかった物件も買い取ってくれないようです。
その他、買取保証可能な物件には条件があります。

上記条件を見ると、一般の人に普通に売れそうな物件しか対応していないと思われます。
不動産買取の相場
買取業者は、一般の人が住むために不動産を購入するのと違って、利益を得るために物件を購入するので、買取価格は一般的な水準の不動産価格より安くなることが多いです。
不動産買取の相場は、一般的な相場の7割ほどの価格になると言われていますが、物件の状態にもよるので一概には言えません。
先ほどご紹介したリバブルの例でも、最大9割で買い取ると記載されています。
例えば、そのまま転売できたり、建物を解体して家を新築して売却した際に、普通に利益がだせるような物件であれば、一般の人が購入するような価格で買い取ることもあります。
実際に私が仲介会社で働いていたとき、一般の人向けの価格で普通に売り出していた物件を、大手の建売不動産会社が値引きせずに購入したことがありました。
(ただし、買取においてこのようなケースは稀です。)
逆に高低差の激しい土地など、商品化するのに多額のコストがかかるような物件や、建て替えできない物件など、デメリットを不動産買取業者でも消せないリスクが高い物件では、半値以下になることもあります。
つまり価値が高くていい物件は、一般的な相場と同程度で買い取ってもらえることもありますが、人気がなくて価値の低い物件は、相場より大幅に安い金額で買い取られることになります。
不動産買取の流れ
つづいて不動産買取の流れを、不動産仲介会社を通して一般の方に売却する場合と比較して、解説致します。
下の図は、【 仲介による売却 】と【 不動産買取 】の流れの違いを表した図です。

全体的な流れは似ていますが、一番の違いは仲介での売却に存在する、3販売活動~4購入検討者を案内~5購入申し込み~6住宅ローン審査の部分が、不動産買取には存在しないことです。
そして、この3~6の部分が、家を売る時に一番面倒で時間がかかる部分になります。
不動産買取の場合は、2【査定】の段階で買取価格を提示され、合意されれば即、売買契約締結 ⇒ 決済・引き渡しとなりますので、早く取引が完結します。
不動産買取を利用するメリット
不動産買取を利用するメリットは、以下の7つです。
1 確実に家を売却できる価格がわかる
2 短期間で確実に不動産を売却できる
3 仲介手数料がかからない
4 契約不適合責任免責になることが多い
5 売却するのに家を片付けたり、掃除する必要がない
6 家を売却中であることを周りに知られずに済む
7 一般の人には売れないような物件でも売却できる可能性がある
それぞれ解説します。
メリット1 確実に家を売却できる価格がわかる
仲介で売却するにせよ、不動産買取にせよ、まずは査定をしてもらいます。
このとき、仲介の査定額はあくまで『この金額で売れるだろう』という、売却予想価格に過ぎません。
当初査定された価格で売れないなんてことは、しょっちゅうあります。
それに対して、不動産買取の査定額は『その金額で確実に売れる金額』(買取価格)になります。
いくらで売れるかわからないというのは、売却して得たお金を何かに使う予定がある場合には、かなりやっかいで、困ったことになる可能性があります。
メリット2 短期間で確実に不動産を売却できる
仲介で家を売却する場合、売りに出してから契約して売却代金を受け取るまで、どれくらいの期間がかかるかわかりません。
物件の状態や売り出し価格によっては、1年以上売れないなんてことも珍しくありません。
それに対して不動産買取は、買取業者が買取可能な物件であれば、すぐに家を売却することができます。
早ければ、買取査定依頼~契約・決済・引き渡しまで、1週間程しかかからないこともあります。
メリット3 仲介手数料がかからない
仲介会社に家の売却を依頼した場合、一般の人に売れた場合だけでなく、買取業者へ売却した場合も仲介手数料がかかります。
不動産の仲介手数料は、【物件の売買価格×3%+6万円+消費税】がかかるのが一般的で、数十万円~ときには100万円以上かかる場合もあるので、仲介手数料はけっこうな費用負担になります。
(上記仲介手数料は法定上限で、400万円以下の物件に関しては18万円+消費税)
それに対して、不動産買取会社へ直接売却した場合は仲介手数料がかかりません。
メリット4 契約不適合責任免責になることが多い
契約不適合責任とは、ざっくり言うと物件の売却引き渡し後に、物件の状態が売買契約書に記載されている状態と異なる場合、売主はその責任を負うというものです。
例えば、物件引き渡し後に給湯器が壊れていることが判明し、修理が必要となった場合に、売主が修理をしたり修理代を支払わなければならないなどが想定されます。
一般の人ではなくプロの不動産業者が買い取る場合は、こういった契約不適合責任は免責(売主は責任を負わない)とされるのが一般的ですので、家を売る側としても安心して売却できます
メリット5 売却するのに家を片付けたり、掃除する必要がない
仲介で家を売却する場合、まず不動産情報サイトやチラシ用に写真を撮ります。
また、売却活動中には家を買いたい人が見に来るので、片付けや掃除をする必要があります。
やはり綺麗な状態の方が見栄えがいいので、売りやすいからです。
買取の場合は、1度買取業者が見に来るだけですので、それほど神経質になることはありません。
なぜなら買取業者は、建物は初めからリフォームする前提だったり、立地や土地の広さなどを重視して価格を評価するからです。
メリット6 家を売却中であることを周りに知られずに済む
不動産会社に直接買い取ってもらう場合、不動産情報サイトへ売却情報を掲載したり、チラシを撒いたりする必要はありません。
また、物件に不特定多数の人が何度も出入りする必要もありませんので、近隣の人に家を売却中であることを知られずに済みます。
メリット7 一般の人には売れないような物件でも売却できる可能性がある
建て替えができない再建築不可物件や、総戸数の少ない自主管理方式のマンション、地方の空き家や古いマンションなどは、住宅ローンが利用できなかったり、そもそも人気がなかったりするので、一般の人には売れないことがあります。
不動産買取業者によっては、そういった一般の人が購入できないような物件でも、買い取ってくれるところがあります。
>>自主管理のマンションは中古で売れない?売れない理由と、上手な売却方法を解説
不動産買取を利用するデメリット
不動産買取を利用するデメリットは、以下の3つです。
1 売却価格が安くなることが多い
2 売る家に合った買取業者を自分で見つける必要がある
3 不動産買取会社とのやり取りを、全て自分でやる必要がある
それぞれ解説します。
デメリット1 売却価格が安くなることが多い
不動産買取の相場でも解説しましたが、不動産買取業者は一般の人と違って、自分たちが利用するためではなく、売って利益を得るために物件を購入します。
なので、買取は一般的な相場より安い価格になります。
仲介で一般の人に売る方が高く売れる可能性が高いのです。
これが不動産買取の最大のデメリットです。
ただし、一般の人に売れないような物件は、不動産買取の業者が買い取る価格が本来の価値とも考えられます。
デメリット2 売る家に合った買取業者を自分で見つける必要がある
不動産は、戸建やマンション、土地など様々な種別がありますし、立地や築年数、広さ、形なども様々です。
また、権利関係が複雑な物件もあります。
不動産買取業者というのは、物件を買い取る時の名称に過ぎないので、本来は建売会社やマンションデベロッパー、リフォームをして再販する買取再販業者などです。
つまり、それぞれの業者に得意・不得意な物件があるため、買取業者によって買取価格が大きく違うことや、買取自体を断られる場合があります。
自分の物件に合った、不動産買取業者を自分で探す必要があるのです。
不動産仲介会社と違って、不動産買取業者は一般の人にはあまり馴染みのない存在ですので、適切な買取業者を探すのが難しいという問題があります。
デメリット3 不動産買取会社とのやり取りを、全て自分でやる必要がある
仲介会社を通して家を売却する場合は、仲介会社が売主の代わりに様々なことを代行してくれます。
また、わからないことがあれば、教えてくれたりサポートしてくれたりもします。
それに対して、直接買取の場合は、不動産買取業者とのやり取りを全て自分でやらなければいけません。
仲介のように、わからないことがあれば教えてもらったり、相談する相手もいません。
できれば知り合いなどで、不動産に詳しく相談できる相手がいればいいですが、都合よくそういった知り合いがいるとも限りません。
物件によっては難しいかもしれませんが、買取をお願いする場合は、できるだけ1社ではなく複数社に買取価格を査定してもらいましょう。
1社だけだと、足元を見られて大幅に安い金額で買い取られてしまう可能性があります。
不動産買取を利用する際の注意点
不動産買取を利用する際には、いくつか注意点があります。
1 売ろうとしている物件に合った買取業者を選ぶ
2 一般の人に売れそうな物件の場合は仲介を利用する
3 なるべく複数の会社に買い取り金額を査定してもらう
4 高く売りたいなら、残置物などを残さないようにする
5 買取に条件を付けられた場合は、慎重に検討する
6 ローンが残っている場合、金額によっては買い取ってもらえない
それぞれ解説します。
注意点1 売ろうとしている物件に合った買取業者を選ぶ
買取業者は、建売業者やマンション業者、リノベーション業者などなど、多岐にわたりますので自分が売ろうとしている物件に合った買取業者を選ぶ必要があります。
売ろうとしている物件が得意でない買取業者に売ろうとしても、買取価格が大幅に安くなったり、買取を断られる可能性があります。
注意点2 一般の人に売れそうな物件の場合は仲介を利用する
買取は通常、仲介で一般の人に売却するより、売却価格が安くなってしまいます。
なので、一般の人に売れるような特に問題のない物件であれば、仲介で売却することをオススメします。
逆に一般の人への売却が難しいような物件であれば、仲介で売りに出していても一向に買い手がつかないこともありますので、買取業者への売却がオススメです。
注意点3 なるべく複数の会社に買い取り金額を査定してもらう
なるべく高く売却するためには、なるべく複数の買取業者から買い取り金額の査定をしてもらいましょう。
1社だけだと、異様に安く買いたたかれる可能性があります。
ただし、何かしら問題のある物件では、対応可能な買取業者の数が多くないこともありますので、そういった場合は、1社でもしょうがないでしょう。
注意点4 高く売りたいなら、残置物などを残さないようにする
売ろうとしている物件に残置物があったりすると、その分を買取価格から差し引かれます。
この差し引かれる金額は、自分達で清掃業者などに頼むときにかかる金額より高いことが多いです。
なるべく高く売りたいなら、業者買取だとしても、物件を綺麗な状態にしておいた方がいいです。
注意点5 買取に条件を付けられた場合は、慎重に検討する
買取の際に、隣地との境界の確定や私道の通行・掘削承諾などを条件にされる場合があります。
これらは、手間がかかるだけでなくお金がかかったりします。
また、相手のあることなので、確実に行えるとも限りません。
こういった条件を提示された場合は、その業者とはすぐに契約せず、もっと条件のいい別の業者を探してみましょう。
注意点6 ローンが残っている場合、金額によっては買い取ってもらえない
売ろうとしている物件にローンが残っている場合、買い取り金額がローンの残っている金額を下回ると、買い取ってもらうことはできません。
ただし自分の手持ち資金で、ローンの残った額を全て返済すれば売却可能です。
買取をお願いする前に、ローンの残債いくら残っているのか確認しておきましょう。
不動産買取まとめ
不動産買取とは、不動産会社に物件を買い取ってもらうことをいう。
不動産買取には、【 即時買取 】と【 買取保証 】の2種類がある。
< 不動産買取を利用するメリット >
1 確実に家を売却できる価格がわかる
2 短期間で確実に不動産を売却できる
3 仲介手数料がかからない
4 契約不適合責任免責になることが多い
5 売却するのに家を片付けたり、掃除する必要がない
6 家を売却中であることを周りに知られずに済む
7 一般の人には売れないような物件でも売却できる可能性がある
< 不動産買取を利用するデメリット >
1 売却価格が安くなることが多い
2 売る家に合った買取業者を自分で見つける必要がある
3 不動産買取会社とのやり取りを、全て自分でやる必要がある
< 不動産買取を利用する際の注意点 >
1 売ろうとしている物件に合った買取業者を選ぶ
2 一般の人に売れそうな物件の場合は仲介を利用する
3 なるべく複数の会社に買い取り金額を査定してもらう
4 高く売りたいなら、残置物などを残さないようにする
5 買取に条件を付けられた場合は、慎重に検討する
6 ローンが残っている場合、金額によっては買い取ってもらえない
不動産買取は仲介に比べて、早く売れるけど売却価格が安くなってしまう取引です。
早く売れなければいけない事情がある場合は、不動産買取の方がオススメです。
また、一般の人には売れないような物件を売却する場合も、不動産買取では売れることが多いのでオススメです。