近年、地震や台風、大雨などによる自然災害が多発していますが、安全な街に住みたい人も多いと思います。
そこで、色々な災害のハザードマップなどを見て、東京23区でどの区が災害に強い安全な街なのかランキングにしました。
災害の危険性が全くない状態を100点として、ハザードマップやその他情報から各区の災害の危険性の有無・危険性の大きさ・危険な面積の割合などを読み取り、減点方式で点数をつけランキングにしました。
ランキングにするにあたって、考慮した災害項目は以下の7項目です。
・地震のゆれやすさ
・地震による地域危険度(建物倒壊・火災危険度・避難困難度)
・洪水(内水含む)
・津波
・高潮
・液状化
・土砂災害(地すべり・土砂崩れ)
※ なおランキングで高順位の区の中でも、場所によっては危険なところもありますし、逆にランキングが低い区の中でも安全性の高い場所もありますので、その点はご理解下さい。
東京23区災害に強い安全な街ランキングの結果は、以下になります。
1位 渋谷区 2位 練馬区 3位 豊島区 4位 目黒区 5位 杉並区
6位 世田谷区 7位 中野区 8位 新宿区 9位 文京区 10位 千代田区
11位 港区 12位 台東区 13位 中央区 14位 品川区 15位 板橋区
16位 大田区 17位 北区区 18位 江東区 19位 墨田区 20位 荒川区
21位 江戸川区 22位 足立区 23位 葛飾区
安全な地域は、23区の北西や西側にかけての区になります。
内陸部にあるので、津波や高潮の危険性がなく、大きな河川にも接していないので、洪水の危険度合いも低いです。
また、武蔵野台地上の良好な地盤の上にあるので、地震や液状化の危険性も低く、土砂災害の危険箇所も少ない傾向にあります。
逆に危険地域は、23区の北部や東部、南部にある区です。
全体的に標高が低いことに加え、海や大きな河川に接しているため、津波・高潮・洪水など水害の危険性が高いです。
また、軟弱な地盤の場所が多いので、地震で揺れやすく、液状化する可能性も高い傾向にあります。
その他、道路が狭く、古い木造住宅が密集している街も多く存在するため、災害に弱い街の構造をしている場所も多いです。
各災害の危険性や、上記のランキング結果に至った詳細な情報については、資料をもとに以下で解説します。
ハザードマップとは?
そもそもハザードマップってなに?という方のために、簡単にご説明致します。
ハザードマップとは、洪水や土砂災害など自然災害の危険性が高い場所を、危険度別に色分けして表示している地図です。
万一の際の、避難場所や避難路についても記載されています。
作成された目的は、
・危険な場所に住んでいる人が、危険を認識すること
・災害時にスムーズかつ迅速に避難できるようにすること
・災害防止対策をすること
により被害軽減を図るためでした。
しかし危険な場所に住まないのが一番いいので、家を購入するときの重要な参考資料としても利用されています。
自治体が法律に基づいて作成しているものと、自主的に作成しているものがあります。
基本的には、自然災害の危険性が高い街ほど、ハザードマップの種類も多い傾向にありますが、自治体によっては、危険性があっても法律で義務付けられていないという理由で、ハザードマップを作成していない場合もあります。
ハザードマップの詳しい種類や、見方などについて詳しく解説している記事もありますので、興味のある方はご覧ください。
また、自然災害の危険性は住んでいる場所以外に、起こる災害によっても変わってきます。
災害ごとのチェックすべきハザードマップは、以下になります。
・地震が起きた場合
地震(揺れやすさ)・液状化・津波・土砂災害・ため池
・台風が来る場合
洪水・内水・高潮・土砂災害
・火山が噴火した場合
火山(噴火)ハザードマップ
それでは、実際に様々な資料を見ていきます。
東京の地形
各災害のハザードマップを見る前に、東京の地形がどのようになっているのかを知ると、理解が深まると思いますので、はじめに東京の地形をみていきたいと思います。
下の図は、東京の標高を色分けして表している色別標高図です。
青が濃くなるほど標高が低く、赤色になるほど標高が高くなります。
標高図中央の皇居(江戸城)のあたりから、西側には武蔵野台地という台地が広がっており、東側には河川が運んできた土砂が堆積した低地が広がっています。
また、大小多数の川が流れているのも特徴です。
基本的には、災害に強い区=台地、災害に弱い区=低地になります。
以上を踏まえて、実際にハザードマップではどうなっているのか、見て評価していきましょう。
東京23区【地震】危険度ランキング
地震は【揺れやすさ】と、【地域危険度】の2点で評価しました。
地震による揺れやすさ
地震による揺れやすさについては、東京都防災ホームページの【表層地盤のゆれやすさ】についての資料をもとに評価していきます。
地震による揺れやすさは、23区東部と北部で高い傾向が見られます。
得に揺れやすいのが、江東区・墨田区・足立区・荒川区・江戸川区・葛飾区です。
揺れやすさと面積に対する比率によって評価し、揺れやすい区ほど減点数を大きくしました。
結果は以下の通りです。減点式ですので、表の下にいくほど揺れやすくなります。
地震による地域危険度(建物倒壊・火災危険度・避難困難度)
地震による建物倒壊・火災危険度・避難困難度については、東京都都市整備局の【地震に関する地域危険度測定調査】の結果をもとに評価しています。
地域危険度測定調査は、だいたい5年おきに行っており、その結果をもとに町丁目ごとに地域危険度を公表しております。
地域危険度は以下の3点を考慮して決められています。
・建物倒壊危険度(建物倒壊の危険性)
・火災危険度(火災の発生による延焼の危険性)
・総合危険度(上記2指標に災害時活動困難度を加味して総合化したもの)
地域危険度は道路が狭く、木造の古い建物が密集している地域で高くなります。よって都心のオフィス街より、下町と呼ばれる場所で危険度が高くなっています。
各区の地域危険度の平均値と、減点数は以下の通りです。
地域危険度の低い区は、1位 千代田区・2位 中央区・3位 港区となっています。
これらの区は都心3区と言われており、道路が広い・ビルやマンションなど鉄筋コンクリート造の建物が多いという特徴があるので、地震危険度が低くなっています。
逆に下位の荒川区・中野区・葛飾区などは、道路が狭いことに加え木造の戸建てやアパートが多いので、危険度が高いです。
地震の危険度についてもっと詳しく解説している記事もありまので、興味のある方は是非ご覧ください。
>>東京23区【地震危険度ランキング】地震に強い地域はここだ!
東京23区【洪水】危険度ランキング(内水も含む)
洪水による危険度は、各区のハザードマップをもとに評価していきます。
大雨による、河川の氾濫と下水処理能力を超えて水が溢れだす内水氾濫の危険性がわかります。
区内にある河川の数、大きさと、浸水想定区域の面積割合と深さを考慮して採点します。
結果は以下の通りです。
洪水危険度の高い区は、大きな河川に接したり挟まれていたりするので、洪水の際は区内の殆どが水没する危険性があります。
23区東部には、荒川・江戸川・隅田川といった大きな河川が複数存在しているため、水害の危険性が高くなっています。
また、南西側にも多摩川がありますので、大田や世田谷区も場所によっては河川の氾濫によって大きな被害が発生する可能性があります。
危険度の低い区は、区内に大きな川が存在しない・川の数が少ない・川の上流にあるので被害がそれ程大きくないのが特徴です。
東京23区【津波】危険度ランキング
東京都が公表している首都直下地震等による東京の被害想定(令和4年5月25日公表)をもとに、東京23区の津波の危険性をみていきたいと思います。
資料によると、東京で最も大きな津波が発生すると予想される地震は、【南海トラフ巨大地震】です。
南海トラフ巨大地震は、津波が発生しやすい海溝型の地震で、規模はマグニチュード9クラス、30年以内の発生確率は70~80%と言われています。
下の図は、南海トラフ巨大地震が発生した場合に予想される、各区の最大津波高とその場所を表しています。
東京都で、津波の被害が想定される区は以下の6区のみです。
江戸川区、江東区、中央区、港区、品川区、大田区
あまり知られていませんが、東京湾は入口が狭くなっているのに加えて、湾内が広がった地形なので、津波の危険性がそれ程高くなく、想定される津波の高さも最大で江東区の2.63mになっております。
また、色々な資料や情報を調査してみましたが、歴史上の記録や地質調査等でも、過去に東京が巨大な津波に襲われた痕跡は見当たらないようです。
想定される高さや浸水想定区域にそれ程差がなく、被害規模も大きいものではないと想定されているので、上記6区を一律-1点とします。
東京都の津波危険度についてもっと知りたいという方は、詳しく解説している記事がありますので、そちらをご覧ください。
また、津波の被害が想定される【中央区】・【港区】・【品川区】・【大田区】・【江戸川区】・【江東区】については個別に、様々な災害危険性について調査した記事もございます。
区内の安全な街・危険な街がわかりますので、6区にお住まいの方や、住みたいと思っている方は是非ご覧ください!
東京23区【高潮】危険度ランキング
高潮の危険性については、東京都の高潮浸水想定区域図をもとに採点していきます。
高潮とは、台風や低気圧の接近により、海水面が吸い上げられたり、強風で吹き寄せられることによって、海水面が上昇する現象のことです。
海水面が上昇すると、河川の水位も上昇しますので、標高の低い場所では広い範囲で浸水し、長時間に渡って浸水し続けると想定されている場所もある、非常に危険な災害です。
東京都では津波の危険性より、高潮が発生した場合の方が被害が大きいと予想されています。
高潮については、海に近い場所や標高の低い地域しか危険性はありません。
東京23区だと以下の区で、高潮の危険性があります。
17区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区)
上の東京都高潮浸水想定区域図を見て頂ければわかる通り、特に23区の東側は全体的に危険性が高いので注意が必要です。
墨田区と江東区では、最大浸水深が5mを超える可能性のある場所も存在しています。
浸水する面積と、深さで減点していきます。結果は以下の通りです。
東京23【液状化】危険度ランキング
23区の液状化の危険性については、東京の液状化予測図 平成24年度改訂版をもとに評価します。
液状化とは、地震による揺れで地中の水分と砂や土などが分離したような状態になり、地面が一時的に液体のように柔らかくなる現象です。
建物などの重たいものは沈み、地中にある下水管などの比重の軽いものは逆に浮き上がってきます。
液状化は、地盤が緩い場所・地下水位が浅い場所で巨大な地震が発生した際に起こりやすいです。
23区の北部・東部と海沿いの地域は、液状化の可能性が高いです。
逆に内陸部では、液状化の心配は殆どありません。
液状化の可能性の高さと、面積で評価した結果は以下の通りです。
東京23区【土砂災害】危険度ランキング
土砂災害の危険性については、東京都建設局が発表している土砂災害(特別)警戒区域の区市町村別指定状況(令和4年6月28日現在)をもとに、各区内の土砂災害警戒区域の数で採点していきます。
なお、土砂災害ハザードマップの危険箇所と土砂災害警戒区域は、基本的にリンクされています。
詳細な位置を知りたい方は、各区の土砂災害ハザードマップをご覧ください。
武蔵野台地の端の方にある区は、台地と低地の境目において急な傾斜が多く存在しているため、土砂災害警戒区域の数も多くなります。
一番数が多かったのは、ダントツで港区でした。
港区を歩いたことがある人ならわかると思いますが、港区は高低差が激しい街ですので、土砂災害の危険性が高い場所が多いです。
逆に海や大きな河川近くの区は、低地が広がっているため、土砂災害の危険性がない区もあります。
土砂災害の危険性がない区は、全体的に平坦な地形で過ごしやすいのですが、水害の危険性と表裏一体の部分があるので注意が必要です。
東京23区災害に強い街ランキング 順位表
各区の災害の危険性を採点した結果は以下の通りです。
得点が同じ区は、地域危険度、土砂災害警戒区域の数、区内を流れる川の数などで順位付けをしました。
東京23区災害に強い街ランキングのベスト3は、以下の通りです!
1位 渋谷区
2位 練馬区
3位 豊島区
ベスト3各区の特徴と、災害に強い理由について解説します。
1位 渋谷区
1位の渋谷区は、東京23区の中心部に位置しております。
渋谷区は、地名に『 谷 』の文字がつくので、あまり災害に強いイメージはないかもしれませんが、区内の約84%が台地になっているため、地盤が比較的良好で地震に強いです。
谷になっているのは渋谷川とその支流沿いの地域で、特にすり鉢状になっていて支流が合流する渋谷駅周辺では、水害の危険性が高いです。
しかし、渋谷駅周辺は商業地なので、住宅の安全性という観点からいうと影響は少ないと思われます。
渋谷区は海に面していないのに加え、区内には多摩川・荒川・江戸川のような大きな河川が存在しません。
唯一存在している渋谷川は、源流が隣にある新宿区の新宿御苑に存在するので、川の規模が小さく、大河川のように上流部での大雨の影響が大きくありません。
また、2006年には渋谷駅西口エリアの地下に神南貯留管(最大貯留量約4,000トン)を整備しています。
さらに、2020年8月末から、渋谷駅東口地下で整備が進められてきた雨水貯留施設(最大貯留量約4,000トン)の供用が開始されました。
これらの対策により、今後一層渋谷区内で大規模な水害は起こりづらくなったと言えます。
道路が狭く古い木造住宅が密集したようなエリアも少ないので、地震発生時に建物の倒壊・火災・避難困難になる可能性も低いです(京王線沿いの笹塚や幡ヶ谷周辺は、木造住宅密集地があるので注意が必要)。
渋谷区には坂がありますが、急な崖地は少なく、土砂災害警戒区域の数が11か所しかないので、土砂災害の危険性も低いです。
2位の練馬区とは、ポイントでは同順位でしたが、地域危険度が渋谷区の方が低かったことと、区内を流れる河川の数と規模から、渋谷区を1位にしました。
渋谷区は、トータル的にみて特に欠点がなく、心配される洪水に対しても貯留施設を作るなど既に対策をしております。
23区の中では災害を気にせず、安心して暮らせる街と言えるでしょう!
渋谷区内で安全な街はどこなのか?ハザードマップなどをもとに調査した記事もございます。
渋谷区に住みたいと思っている方や既に住んでいる方で、もっと細かい範囲で安全な街はどこなのか知りたい!という方は是非ご覧ください。
2位 練馬区
2位の練馬区は、東京23区北西部に位置しております。
区内の約89%が台地で、標高も平均で30~50mほどありますので、地盤が良好な場所が多く地震に強いです。
木造の建物が多いので、1位の渋谷区より地域危険度では劣りますが、農地が多く開放的な街です。
練馬区は海に面していませんが、区内に石神井川・白子川・江古田川が流れており、大雨の際は川の近くでは氾濫の危険性があります。しかし、多摩川や荒川、江戸川、隅田川のような大きな河川ではないため、危険度としてはそれほど高いわけではありません。
それ以外の災害の危険性はあまりなく、安心して住める街です。
災害とは関係ありませんが、23区にしては不動産価格が安く、郊外にある閑静な住宅街のような暮らしができるところも、おすすめポイントのひとつです。
練馬区内で安全な街はどこなのか?ハザードマップなどをもとに調査した記事もあります。
練馬区に住みたいと思っている方や既に住んでいる方で、もっと細かい範囲で安全な街はどこなのか知りたい!という方は是非ご覧ください。
3位 豊島区
豊島区は、23区中心部のやや北に位置します。
上位2位までの区と比べて、木造の建物の密集地が多く、地震の際の地域危険度が高かったため3位となりました。
豊島区の地形は、区内の約77%が台地となっており、小さい川に削られた谷がいくつかあります。
地盤は比較的良好で、地震にも強いです。海に接しておらず津波や高潮の危険性がないことに加え、液状化の危険性も低いです。
河川の近くでは水害の危険性がありますが、それ以外の地域は全体的に安全な街です。
池袋というビックターミナル駅があるので、都心部へのアクセスも良好で買い物も便利な街です。山手線の外側のエリアでは、不動産価格もお手頃なのでおすすめです。
豊島区内で安全な街はどこなのか?ハザードマップなどをもとに調査した記事もあります。
豊島区に住みたいと思っている方や既に住んでいる方で、もっと細かい範囲で安全な街はどこなのか知りたい!という方は是非ご覧ください。
まとめ
東京23区で、災害に強い街は1位 渋谷区、2位 練馬区、3位 豊島区となりました。
上位の区は、地形の殆どが台地になっており、海や大きな河川に接していない内陸部の区でした。
建築技術が進歩して、災害に強い家が建てられていますが、もともと災害に強い場所に住むのが一番いいのは間違いありません。
自宅が安全なら、避難する必要もありません!
また、日頃から災害対策をしておくのも重要です。自然災害は広範囲に影響を及ぼすので、安全な街に住んでいても、ライフラインが使えなくなる可能性があります。
防災用品を用意するなど、万が一のことが起こっても大丈夫なように対策しておきましょう!
区ごとではなく、もっと狭い範囲で安全な街がどこなのか知りたいという方には、それぞれの区でどこが安全な街なのか調査している記事もありますので、興味のある方はご覧ください。
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