家を建てるために土地を探してて、予算に合う土地が見つかったけど、間口が狭い物件だった。
注文住宅で夢のマイホームを建てたいけど、こんな土地で大丈夫なんだろうか…
そんな不安を抱えている方のために、間口が狭い土地に家を建てる際のメリット・デメリットと注意点を、仲介会社で働いていた経験がある宅建士が解説します。
間口が狭い家は、土地代が安い・道路側からのプライバシーが守られやすい・泥棒に入られにくい・静かなどのメリットがあります。
デメリットとしては、間取りの設計自由度が低い・日当たりや風通しが悪い・車の駐車がしづらい・火災の危険性が高い・耐震性が低い・隣の家と双方の音が聞こえやすい・解体費や建築費が割高になる・将来売却しづらいなどがあります。
これらのメリット・デメリットを理解していないと、土地を購入して家を建てた後、深く後悔する可能性があります。
【間口】とは土地のどこの部分?
間口とは、敷地と道路が接している部分のことをいいます。
この部分の長さが狭いと、間口が狭い家(土地)などと言われ、逆に長いと間口が広い家(土地)と言われます。
角地のような土地の場合、敷地と道路が接している部分が2方向あるので、間口が広くなります。
また、両サイドは他の人の敷地に挟まれているけど、別々の二つの道路に接している家のように、間口が2つある家もあります。
ちなみに、土地の間口が2m以上ないと、基本的に家を新たに建てることはできませんので、ご注意ください。(建築基準法第43条)
間口が狭い土地の代表的な3パターン
続いて、間口が狭い土地のよくあるパターンを3つご紹介します。
パターン1 細長い土地(ウナギの寝床)
よくあるパターンの1つ目は、間口が狭く奥行きが長い、細長い土地です。このような土地を通称ウナギの寝床なんて読んだりします。
江戸時代には、まだ高さのある建物を建てる技術がなかったため、ほとんどの家が平屋か2階建てでした。
そして狭い範囲に沢山の人を住まわせるため、このような土地の家が多く作られました。
今では信じられない話しですが、当時は間口の広さで税金を取る、間口税といものが存在しており、間口が広い家ほど税金を多く徴収されていました。
パターン2 旗竿地
よくあるパターンの1つ目は、幅2mほどの通路のような土地の奥に家を建てるスペースがある、旗竿地です。
上の図は、旗竿地の代表的なタイプですが、通路部分の道路に近い位置が少し広がっていて、駐車スペースがあるタイプや、2つの旗竿地がくっついたタイプなど、色々なパターンがあります。
詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>旗竿地は安いけどやめたほうがいい?メリット・デメリットをわかりやすく解説します
パターン3 行き止まり道路の奥の家
最近は減ったように思いますが、以前は不動産会社が、広めの土地を分割して分譲地として販売する際に、上の図のような分割の仕方をすることがありました。
行き止まり道路の奥にあり、敷地の角が2m道路に接しているだけの家です。
パターン4 不整形地
最後のパターンは、敷地の一部だけ道路に接している不整形地です。
新しく道路ができるときなどに、このような土地が生まれてしまうことがあります。
>>整形地・不整形地とは?図を使って主な形状とメリット・デメリットを解説
間口が狭い家の、4つのメリット
間口が狭い家には、以下4つメリットがあります。
1 土地代が安い
2 道路側からのプライバシーが守られやすい
3 静か
4 泥棒に入られにくい
それぞれ解説します。
メリット1 土地代が安い
間口の狭い土地は、後ほど解説するデメリットの多さから、普通の土地に比べて土地の坪単価(1坪辺りの価格)が安いです。
なので、予算が厳しいけどいい立地は諦めたくない!という方にとっては、予算内で夢のマイホームを建てられる可能性がある土地になります。
具体的な価格については、間口の広さだけでなく、土地の広さや形、方角などにもよるので一概に言えない部分もありますが、普通の土地に比べて1~3割ほど安くなります。
普通の土地に近い土地ほど価格も高くなり、旗竿地のように極端に間口が狭く、土地の形も悪い場合は3割くらい安くなります。
メリット2 道路側からのプライバシーが守られやすい
間口の狭い家は、道路側から見える範囲が狭いため、室内が見えづらくプライバシーが守られやすいです。
特に旗竿地は、道路側からほとんど見えないこともあります。
また、家の奥と道路の距離ができやすいので、室内の音が外に漏れづらいという特徴もあります。
メリット3 静か
都市部では、敷地いっぱいに家を建てることも多く、家のすぐそばを人が歩いたり、車が通るとけっこう音が室内に入ってきます。
間口が狭い家は、道路と接している部分が少ないので、部屋の中に道路側からの音が入ってきづらく、間口の広い家に比べると静かです。
メリット4 泥棒に入られにくい
泥棒は玄関だけでなく、窓からも侵入してきます。
間口の狭い家は、道路側からの侵入経路が一方向しかなく、隣地との隙間の狭い傾向にあるので、泥棒からすると侵入しづらい家になります。
逆に、角地のように広く開放された土地に建つ家は、侵入経路が多いため、泥棒に入られやすいと言われています。
間口が狭い家の、8つのデメリット
間口が狭い土地には、以下8つのデメリットがあります。
1 間取りの設計自由度が低い
2 日当たりや風通しが悪い
3 車の駐車がしづらい
4 火災の危険性が高い
5 耐震性が低い
6 隣の家とお互いの音が聞こえやすい
7 解体費や建築費が割高になる
8 将来売却しづらい
それぞれ解説します。
デメリット1 間取りの設計自由度が低い
間口の狭い家は、道路に接している部分や日の当たる部分が限られているため、玄関や窓の位置、部屋の位置、バルコニーの位置、駐車場の位置などが、大体決まってしまいますので、間取りの設計自由度が低くなります。
間口が狭くても、奥に広がる土地の面積が広ければ、ある程度自由度は増すのですが、狭い場合はなおさらです。
デメリット2 日当たりや風通しが悪い
間口が狭い = 家の周りのほとんどを、他の家に囲まれているので、日当たりが悪く、風通しもよくありません。
日中でも電気をつけなければ暗い家、なんてこともあります。
デメリット3 車の駐車がしづらい
車の駐車のしやすさは、間口の広さと前面道路の幅で決まります。
前面道路がかなり広ければ、間口が狭くても無理なく駐車できる場合もありますが、逆の場合は、何度も切り返さないと駐車できなかったり、最悪、駐車場を諦めざるを得ない場合もあります。
デメリット4 火災の危険性が高い
間口の狭い家は、周囲を他の家に囲まれているので、隣の家で火事が起きると、燃え移りやすいです。
また、避難する際の出口が狭いので、出口に近い部分が燃えていると、避難が困難になる可能性があります。
これは火事だけでなく、大地震で出入り口近くの家が倒壊した場合も同様です。
デメリット5 耐震性が低い
家の形は正方形に近い、四角形のシンプルな形をしている方が、耐震性が高くなります。
細長い土地や、間口の狭い不整形地に建てられた家は、極端に細長い家や、いびつな形の耐震性が低い家になることがあります。
ただし、木造3階建ての場合は、新築時に構造計算が義務付けられていますので、最低限の耐震性は確保されています。
デメリット6 隣の家とお互いの音が聞こえやすい
間口の狭い家は、隣の家との距離が近い場合が多く、お互いの生活音が聞こえやすいです。
特に窓をよく開ける季節では、丸聞こえになりやすいので、注意が必要です。
デメリット7 解体費や建築費が割高になる
旗竿地のように極端に間口が狭い場合、家を解体するときや新築するときに、重機が使えないことがあり、そうなると人の手で全てやらなければいけません。
そうなるとどうしても人手を増やすか、増やさない場合時間がかかりますので、解体費や建築費が高くなります。
クレーンが使えないと、工法によっては建築自体できない可能性まであります。
ちなみに、土地の間口が狭いだけでなく、その土地周辺の道路が狭くて車の通行が困難な場合も同じ事が言えますので、注意が必要です。
デメリット8 将来売却しづらい
ここまで解説した通り、間口の狭い家はデメリットが多いので、将来売却するときに売るのに苦労することが多いです。
売れたとしても、安くでしか売れないと思った方がいいでしょう。
私は、以前不動産仲介会社で働いていましたが、間口の狭い家(特に旗竿地や、行き止まり道路の奥の家)は、売りづらいという印象があります。
実際に不動産情報サイトでも、こういった家はよく目につきますし、長期間売れ残っていることが多いです。
間口が狭い家の間取り・設計に取り入れたいポイントや注意点
間口が狭い家のメリット・デメリットがわかったところで、それらを踏まえて、実際に家を建てるときの間取り・設計で取り入れたいポイントや、注意点を解説します。
以下のような点に気をつけましょう。
1,光や風を取り込めるようにする
2,壁や間仕切りをなくし、開放的な空間にする
3,家の日当たりが悪い位置には、日当たりが悪くても問題ない部屋を設置する
4,防音・遮音対策を取り入れる
5,車が駐車できるか、駐車はしやすいか確認する
6,エアコンの室外機や床暖房設備など、屋外設置物の位置も意識する
それぞれ解説します。
1 光や風を取り込めるようにする
間口が狭い家は、道路側に接している開放的な面が少ないので、少しでも日当たりや風通しを良くする工夫が必要です。
対策としては、トップライト(天井に設置する窓)やハイサイドライト(頭より高い位置にある横長の窓)、中庭を取り入れるなどの方法があります。
特に細長い土地に家を建てる場合は、中庭を取り入れるのが有効で、京都の町屋でもこのような手法が取り入れられています。
2 壁や間仕切りをなくし、開放的な空間にする
トップライトやハイサイドライトを設置しても、家の中が壁や間仕切りで区切られていると、窓がある部屋以外は暗いままです。
なるべく壁や間仕切りをなくし、開放的な空間にすることで、家の奥まで光や風を取り入れることができます。
対策としては、吹き抜けを作ったり、スキップフロアを作ることで、階下と階上の部屋の間に、もう一つの階を設けて、間仕切壁を無くし、連続した空間をつくります。
ただし、開放的な空間の家は冷暖房の効率が落ちてしまいますので、注意が必要です。
もし間仕切りを作るとしても、半透明の素材にしたり、格子状にすることで、明るさや開放感を取り入れることができます。
また、壁紙を白にすることで光が反射し、明るい空間になります。
3 家の日当たりが悪い位置には、暗くても問題ない部屋を設置する
間口が狭い家には、必ず日当たりが悪く、昼間でも暗くなってしまう場所が生まれてしまいます。
そのような場所には、無理に部屋を作らず、トイレや浴室、洗面所、収納スペースなどをつくるようにしましょう。
それでもまだ、日当たりの悪いスペースが残る場合は、寝室を作るか、LDKのキッチンを日当たりの悪い位置に設置するのがいいと思います。
寝室は、道路から離れていた方が静かでぐっすり寝れるので、おススメです。
4 防音・遮音対策を取り入れる
間口が狭い家は、周りを隣の家に囲まれているので、お互いの音が聞こえやすいです。
なので、一般的な家以上に防音対策することをおススメします。
場合によってはトラブルに発展しかねませんので、音漏れの原因となりやすい窓や換気扇の位置、窓の種類などに気をつけましょう。
窓の種類としては、特にルーバー窓の遮音性が低いです。
ルーバー窓は遮音性が低いだけでなく、断熱性や防犯性も低いのでオススメしません。
>>窓の多い家のデメリットは寒いだけじゃない!防犯や耐震性など、8つのデメリットと対策方法を紹介
>>注文住宅で失敗しない窓の決め方・選び方 後悔した事例もご紹介
5 車が駐車できるか、駐車はしやすいか確認する
車を所有するなら、駐車のしやすさも気をつけたいポイントです。
デメリットの部分でも解説しましたが、間口が狭いと車の駐車がしづらいだけでなく、最悪の場合、車を駐車できません。
家(土地)を購入する前に、必ず一度、実際に車を駐車してみましょう。
特に間口が狭いだけでなく、前面道路の幅も狭い場合は、駐車が困難です。
旗竿地の駐車について解説している記事もありますので、興味のある方はご覧ください。
>>旗竿地の間口は何メートルあれば駐車可能?2m、2.5m、3m、4mそれぞれの駐車のしやすさを解説
6 エアコンの室外機や床暖房設備など、屋外設置物の位置も意識する
間口の狭い家は、敷地いっぱいに家を建てることが多いので、エアコンの室外機や床暖房設備の置き場に困ることがあります。
置き場まで意識して設計しないと、屋根に置くことになったり、壁にかける必要がでてきたりします。
置ければどこでもいいと思う方もいるかもしれませんが、メンテナンス性や景観があまり良くないので、ある程度設置する位置を考えて設計することをおススメします。
まとめ
< 間口が狭い家の、4つメリット >
1 土地代が安い
2 道路側からのプライバシーが守られやすい
3 静か
4 泥棒に入られにくい
< 間口が狭い土地の、8つのデメリット >
1 間取りの設計自由度が低い
2 日当たりや風通しが悪い
3 車の駐車がしづらい
4 火災の危険性が高い
5 耐震性が低い
6 隣の家とお互いの音が聞こえやすい
7 解体費や建築費が割高になる
8 将来売却しづらい
< 間口が狭い家の間取り・設計で取り入れたいポイントや、注意点 >
1,光や風を取り込めるようにする
2,壁や間仕切りをなくし、開放的な空間にする
3,家の日当たりが悪い位置には、日当たりが悪くても問題ない部屋を設置する
4,防音・遮音対策を取り入れる
5,車が駐車できるか、駐車はしやすいか確認する
6,エアコンの室外機や床暖房設備など、屋外に設置する位置も意識する
間口が狭い家にはメリットもありますが、デメリットが多く存在します。
また、家を建てる際は、間取りに普通の家とは違う工夫が必要となりますので、間口が狭い土地に建つ家の設計経験が豊富なハウスメーカーや建築士に、設計をお願いすることをおススメします。
当サイトでは、他にも家を建てる際や、土地を選ぶときに役立つ記事がございますので、是非ご覧ください!
< 家を建てる時に役立つ記事 >
< 土地を選ぶ時に役立つ記事 >
< 家を買う時に役立つ記事 >