所有しているマンションを売りたいが、自主管理が理由で売れないで困っている…
私は以前不動産仲介会社で勤務していたとき、売れない自主管理の中古マンションをたくさん見てきました。
自主管理マンションは、不動産取引の中でも専門性の高い物件なので、一般的な不動産仲介会社に売却をお願いしても売り方がわからず、いつまでたっても売れないなんてことも珍しくありません。
自主管理のマンションを売却するには、原因(売れない理由)を理解した上で、的確な対処法(売り方)をとらなければいけません。
今回は、自主管理のマンションが売れない理由と、上手な売却方法を解説します。
自主管理マンションとは
マンションは建物や設備、植栽などの維持管理が必要で、それにはお金が必要です。
分譲マンションでは、一つの建物を複数の人たちで共有しているので、所有者達がこれらを協力して行わなければいけません。
しかし、お金の徴収や管理、建物の維持管理などを居住者達でやるには大変なうえに、専門知識などもある程度必要になってきます。
そこで、マンションの維持管理などをマンション管理会社に委託する方法(管理委託方式)をとっている場合と、自分達で管理する方法(自主管理方式)をとっているマンションが、存在しています。
後者のマンションの維持管理すべてを所有者たちが行っているマンションを、【自主管理マンション】といいます。
自主管理マンションのメリット・デメリット
自主管理方式という管理形態には、メリットもあるのですが、デメリットもあります。
売却活動をするうえで大きく関係してきますので、解説します。
< 自主管理マンションの3つのメリット >
・管理費・修繕費が安い
・居住者の管理運営意識が高い
・居住者間のコミュニケーションが盛ん
< 自主管理マンションの4つのデメリット >
・管理の質が低い可能性がある
・管理費などが適正に管理されないリスクがある
・トラブル対応が難しい
・住宅ローンが使えない可能性がある
自主管理マンションは、上手く運営されていればメリットが大きい管理方式なのですが、逆に上手く運営されていない場合は、マンションがしっかり管理されているとは言えずに悲惨な状況になることもあります。
管理状態がいいマンションと、悪いマンションの差が激しい傾向にあります。
それに対して管理をマンション管理会社に委託している場合は、それなりの質に保たれます。
また、デメリットの一つに住宅ローンが使えない可能性があり、これが売却活動に一番大きく関係してきます。
自主管理マンションのメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説していますので、興味のある方はご覧ください。
買う前に知っておきたい!自主管理マンションの【メリット・デメリット】
自主管理のマンションが売れない理由
それでは、自主管理マンションが売れない理由を解説いたします。
1 住宅ローンが使えない
2 マンションの管理・運営がきちんとされていないことがある
3 人気がない
全ての自主管理物件が該当するわけではありませんが、該当する数が多いほど、中古市場で売却するのは困難な物件ということになります。
売れなくてお困りの方は、該当するかどうかご自身で確認してみて下さい。
売れない理由1 住宅ローンが使えない
自主管理のマンションは、購入しようとしても住宅ローンが利用できないことが多いです。
特に総戸数が少ないマンションは、可能性が高くなります。
住宅ローン不可となる具体的な戸数については、銀行によって違いますし、銀行は審査基準を詳細には教えてくれないのでわかりません。
いくつかの銀行に問い合わせた経験からいうと、総戸数が20戸を下回ってくると融資不可の銀行が増えてきて、10戸を下回るとほとんどの銀行が住宅ローンを貸しません。
自主管理マンションが、住宅ローンを使えない理由については、以下の記事で詳しく解説しています。
>>自主管理マンションは、住宅ローンが使えない?物件を購入する際の注意点を解説
不動産は高額なので、現金で購入する人は殆どいないのが現実で、住宅ローンが使えない物件=売れない物件と言っても過言ではありません。
戸数が多いマンションであれば、自主管理であっても住宅ローンを利用できることが多いので、売りやすくなります。
また、住宅ローンの融資をする際に自主管理かどうかは関係ないという金融機関もあるので、後ほどご紹介します。
□ 売りたいマンションの総戸数が何戸あるのか、確認する。
売れない理由2 マンションの管理・運営がきちんとされていない
自主管理のマンションを売却する際は、マンションの管理・運営がきちんと行われていることが重要です。
中古マンションを売買する際、仲介会社は管理組合から「管理規約・重要事項調査報告書・修繕履歴・長期修繕計画書」などの書類を取得します。
そしてこれらの資料をもとに、どんな物件なのか契約前に重要事項説明書を作成して、購入希望者に説明してから契約します。
マンションの管理を管理会社に委託している物件では、管理会社がこのような書類を作成して、対応しています。
しかし、自主管理のマンションでは管理組合自体存在していなかったり、管理組合があってもこのような書類を作成していないことがあります。
これらの書類は、住宅ローン審査の際に銀行から提出を求められることは少ないのですが、仲介会社が作成した重要事項説明書は提出を求められます。
管理規約や重要事項調査報告書がない場合、仲介会社が銀行に提出した重要事項説明書で、管理規約等がないことが銀行にもわかりますので、住宅ローンの審査にも不利になります。
購入希望者も説明の際に、管理規約なしや、管理について詳しい説明がされないと不安になり、購入を躊躇してしまうことがあります。
□ 売りたいマンションには、管理規約・重要事項調査報告書・修繕履歴・長期修繕計画書があるのか確認する。
売れない理由3 人気がない
マンションを購入する方は、戸建て購入者に比べると近所付き合いや自宅の維持管理を自分でしたがらない傾向にあります。
例えば、共用部の掃除や、庭や植栽の伐採、建物設備の点検や修繕など、マンション管理会社がやってくれるていることが沢山ありますが、
マンション購入者のほとんどは、管理費を払ってマンションの管理運営をしてもらうのが当たり前と思っています。
なので自主管理のマンションのように、自分達で管理運営したり所有者同士で積極的にコミュニケーションをとらなければいけない物件は、人気がありません。
また、自主管理のマンションは小規模な物件が多い傾向にありますが、小規模なマンションも人気が低い傾向にあります。
住宅ローンが利用できようが、管理運営がしっかりされていようが、人気が無い場合は値下げしないと売れません。
自主管理マンションの売却方法
自主管理のマンションを売却するには、先ほど解説した売れない理由に該当するかどうかが重要です。
どの程度該当するかによって、売却方法が異なりますので、わかりやすいように売却フローチャートを作成しました。
フローチャートの内容について、以下で詳しく説明します。
マンションの総戸数が20戸以上ある場合
総戸数が20戸以上あって、管理組合もきちんと運営されている物件なら、通常のマンションと同様に売却できる可能性が高いです。
一般的なマンション同様、不動産仲介会社に売却を依頼しましょう。
ただし、自主管理というだけで一般的な管理委託物件に比べると、人気は落ちます。
また、マンションの売れ行きは、管理形態に関係なく立地と価格による部分が大きいので、売却をお願いする不動産会社から周辺成約事例などの情報を入手し、相談しながら売却価格を決めましょう。
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総戸数が20戸未満でも、購入者が住宅ローンを利用できそうな場合
マンションの管理形態や総戸数に関わらず、利用できる住宅ローンがあります。
それは【フラット35】です。
フラット35とは、公的機関である住宅金融支援機構が提供している住宅ローンですが、全国の銀行などが販売代理店となっておりますので、基本的にほとんどの銀行で利用可能です。
詳しく知りたいという方は、以下の記事で詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。
>>フラット35とは? フラット35の種類とそれぞれの特徴についてわかりやすく解説
ただし、フラット35は管理形態や総戸数による制限はないのですが、以下4つの条件をクリアしなければ利用できません。
1、管理規約がある
2、20年以上の長期修繕計画がある
3、現在の耐震基準に適合している(新耐震基準)
4、適合証明書が取得できる
利用条件の1と2は、マンションの管理組合が用意するものとなります。
ほとんどのマンションには管理規約がありますが、長期修繕計画は作成していないところも多いです。
もしない場合は、新たに作成しなければいけませんが、管理組合全体で作成するものなので、個人では作成できないのが難点です。
利用条件3は、築年数が浅いマンション(1981年6月1日以降に建築確認申請されているマンション)では問題ありませんが、古いマンションでは旧耐震基準という扱いになりますので、新たに耐震補強工事をしていなければいけません。
利用条件4は、耐震基準以外にも、マンションの設計に違法な部分はないかや、住宅金融支援機構が求める基準に適合していなければ、適合証明を取得できません。
低記号証明については、フラット35公式サイトのリンクを貼っておきますので、詳しく知りたい方はそちらをご覧ください。⇒【フラット35】の対象となる住宅・技術基準
利用条件をわかりやすくまとめると、『管理組合の運営がしっかりされていることに加え、新耐震基準のしっかりした性能のマンションでなければいけない』ということです。
利用条件を満たしている場合は、フラット35が利用可能(住宅ローンを借りる人の収入などによる)なので、不動産仲介会社の営業マンに、販売活動の際はその旨を購入者希望者に伝えてもらいましょう。
購入者が住宅ローンを利用できるなら、売却できる可能性がぐっと高まります。
仲介会社の人がフラット35を利用できることを知らないと、購入希望者が民間の銀行に住宅ローンの審査を申込んで否決となり、購入をあきらめるなんてことになりかねません。
もし、そもそも管理組合がきちんと運営されていない場合や、マンションが古い場合など、利用条件を満たしていない場合は、下に記載している【総戸数20戸未満で、住宅ローンの利用が難しい場合】に進んでください。
総戸数20戸未満で、住宅ローンの利用が難しい場合
住宅ローンが利用できない場合は、正直言って一般の方に売却するのは非常に困難です。
不動産買取会社に、直接買い取ってもらうことをおすすめします。
早く売却したい方は勿論ですが、時間に余裕のある方でも、時間が経過すると築年数が増えてマンションの価値は下がりますので、早めに売却した方がいいでしょう。
不動産買取会社に買い取ってももらう場合、売却価格は安くなってしまいますが、一般の方に売れないのであればそれは仕方がありません。
むしろ売却の相手が不動産買取会社であっても、売れるだけ幸運だったと思いましょう。
自主管理マンションが廃墟化して、問題になった事例
管理がキチンと行われていない、売れないという理由で、自主管理のマンションが廃墟化して問題になった事例があるので、ご紹介します。
滋賀県野洲市で老朽化した自主管理のマンションが放置された挙句、行政代執行により建物が解体され、所有者には解体費が請求されました。
行政代執行とは、強制執行の一種で、本来不動産所有者がやるべきことをやらない場合に、役所が代わりに行い、その費用を所有者から徴収することをいいます。
1972年築、総戸数9戸、鉄骨造3階建て、【美和コーポ】という名称の分譲マンションです。
下の写真は、解体される前の実際の写真です。廃墟化が進み過ぎて、壁さえありません。
廃墟になった理由は、分譲当初から管理組合が存在せず、維持管理がされていなかったことにくわえ、築40年ほど経過した頃から住む人が誰もいなくなったことが原因です。
交通量の多い道路に面していて危険なことや、発がん性のあるアスベストを含む建材が使用されていることなどから、2020年7月に行政代執行で、市が所有者に代わって解体しました。
解体費用の総額は約1億2千万円。
所有者は1人当たり、市から約1,300万円請求されています。
分譲マンションの管理・運営は区分所有法という法律が関係しており、管理組合が適正に運営されないと、自分一人ではどうにもできない状態になります。
また、売却しようにも売れなかったと思われます。
不動産業者買取のメリット・デメリット
不動産買取を利用するメリットは、以下の7つです。
1 確実に家を売却できる価格がわかる
2 短期間で確実に不動産を売却できる
3 仲介手数料がかからない
4 契約不適合責任免責になることが多い
5 売却するのに家を片付けたり、掃除する必要がない
6 家を売却中であることを周りに知られずに済む
7 一般の人には売れないような物件でも売却できる可能性がある
買取価格に合意すれば、早く・確実に売却することができます。
デメリットとしては、一般の人に売却できた場合に比べると、売却価格が安くなってしまうことです。
不動産買取業者はたくさん存在しているのですが、一般の方には馴染みがないですし、場所や物件ごとに高く買い取れる業者は異なります。
自主管理マンションでも、積極的に買い取っている不動産買取業者も存在しています。
【訳アリ物件買取PRO】を運営している 株式会社Alba Link が有名です。
平成23年に設立された業歴10年以上の不動産会社で、全国で年間200件以上の買取を行っている実績のある会社です。
東京に本社がありますが、大阪や千葉、茨城にも支店があります。
普通の不動産買取業者が買い取らないような人気のない物件、訳アリ物件などを積極的に購入している、全国的にも珍しい業者です。
あまり一般の方には馴染みのない会社ですが、不動産業界の人の間では、一般の方には売れないような物件を買い取ってくれる業者として知られています。
以下のような特徴があるサービスです。
・自主管理のマンションなど、一般の人に売却するのが難しい物件でも買取可能
・都市部だけでなく、日本全国買取対応
・売った物件に新たに問題が発見されても責任を取らなくていい、契約不適合免責
・直接買い取りなので仲介手数料無料
日本全国対応しており、買取査定は無料です。
最低限この価格で売れるというのを知るだけでも、精神的にかなり楽になりますし、買取価格に合意すればすぐに売却できます。
人口減少が進む日本では、時間が経つほど売れづらくなることは間違いないと思いますので、早めの行動が重要です。
30秒ほどの簡単な入力をするだけで、買取査定が依頼できますので、早く処分したい方は査定依頼してみることをお勧めします。
買取価格を知りたい方はコチラから ⇒ 【訳アリ物件買取PRO】
不動産買取が不安な方や、訳アリ物件買取プロについてもっと詳しく知りたいという方は、以下の記事をご覧ください。
>>【訳あり物件買取プロ】は安心して利用できる?評判、口コミ、運営会社を調査しました!
まとめ
<自主管理マンションが売れない理由>
・住宅ローンが使えない
・マンションの管理・運営がきちんとされていない
・人気がない
<自主管理マンションの売却方法>
・マンションの総戸数が20戸以上ある場合
⇒ 普通に売れる可能性有り、仲介会社に売却を依頼しましょう。
・総戸数が20戸未満でも、購入者が住宅ローンを利用できそうな場合
⇒ 購入希望者が住宅ローンを利用できれば売れる可能性有り、利用できる住宅ローンを調べて仲介会社に伝えておきましょう。
・総戸数20戸未満で、住宅ローンの利用が難しい場合
⇒ 一般の人への売却は困難です。不動産買取業者に買い取ってもらいましょう。
総戸数が少なく、管理運営がしっかり行われていない自主管理マンションほど、一般の方に売却するのが難しくなります。
そのような場合は、不動産買取業者に買い取ってもらうのがいいでしょう。
売れなくて困っているという方は、ダメもとでもいいので買取可能か聞いてみることをオススメします。
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当サイトでは、家が売れなかった場合どうなるのか解説した記事もありますので、興味のある方はご覧下さい。
>>売れない家はどうなる?不動産仲介会社で見てきた、売れ残った物件が辿る道
その他、売れないマンションは【放棄】や【寄付】、【無償譲渡】できるのかどうかについて解説している記事もあります。