いざ家を建て替えようと思ったら、建設会社や設計士に建て替え不可能な土地と言われた。
相場よりかなり安い家が売りに出ていたので、問い合わせたら再建築不可ですと言われた。
家を売ろうと思ったら、再建築不可なので全然売れなくて困っている……
再建築不可物件を建て替え可能にする裏ワザが知りたい
今回は、建て替えできなくて困っている、建て替え可能にする方法が知りたい!という方のために、元不動産仲介会社勤務の宅建士が、再建築不可物件を建て替えできるようにする方法を解説します。
実際に建て替えできなくて困っている方にとっては、解決の参考になると思いますので、是非ご覧ください。
再建築不可物件とは?
再建築不可物件とは、家の建て替えや新築ができない物件のことをいいます。
そんな土地あるの?と思われるかもしれませんが、全国至る所にあります。それほど珍しいことではないんです。
というのも、昔は建物の新築・建て替え等に関するルールが細かく決まっていなかったのですが、1950年に細かいルールを決める法律ができたことで、建て替えできない土地になってしまったのです。
再建築不可物件が、建て替えができない理由
建物を新たに建築する際には、建築基準法という法律が関係してきます。
この法律を守らないと、建物の新築や建て替えはできません。
この法律では、わかりやすくまとめると、新たに建物を建てる際は建築基準法上の道路に2m以上接道していなければいけない(建築基準法第43条)と定められています。
建築基準法上の道路とは?
基準法上の道路とはなんぞや?と思われるでしょうが、一見道路に見えるが実は道路のように舗装されているだけの誰かの私有地や、小さな川の上にふたをして道路のようになっているだけで、実は建築基準法で定義している道路ではない道路のような土地が存在します。
建築の世界では、道がアスファルト舗装されているだけでは、道路として認めていないのです。
実際問題これはかなりややこしく、建築基準法上の道路かそうでないかは、現地を見ただけでは不動産業者でさえもわからない場合があります。
誰が建築基準法上の道路かどうか決めているかというと、役所です。
家の前の道が建築基準法上の道路かどうか、どうやって調べるかというと、役所の道路課など道路を管理している部署があり、そこに行くと確認できます。自治体によってはホームページで公表しているところもあります。
基本的に役所は、自分の自治体の範囲にある全ての道路状部分を、基準法上の道路か道路じゃないか(専門用語では法外という)判別して指定しています。
建築基準法上の道路種別については、以下の記事で詳しく解説しています。
>>【不動産調査】建築基準法上の道路種別と私道・公道・2項道路・但し書き道路の違いを解説
2m以上接道とは?
接道とは、道路に接することまたは、自分の土地が接している道路のことをいいます。
2m以上接道とは、自分の土地の間口(道路と接している部分)が連続して2m以上、道路に接していなければいけないということです。
道路に全く接道していない土地や、接道していても2m未満の場合は、基本的に建て替えできない再建築不可物件になってしまいます。
具体例を以下で解説します。
再建築不可物件4つのパターン
再建築不可になってしまう、よくある土地の状況を4つ紹介します。
< パターン1 >旗竿地
上の図は、旗竿地と言われる土地の形で、道路から通路状の土地が伸びており、奥に家を建てる部分があります。
再建築不可でよくあるのが、通路状部分の間口が2mないことです。
ちなみに、あまりないパターンですが、間口が2mあっても通路部分の幅が一部でも2m未満だった場合も再建築不可になります。
旗竿地についてもっと知りたいという方は、以下の記事をご覧ください。
旗竿地は安いけどやめたほうがいい?メリット・デメリットをわかりやすく解説します
< パターン2 >行き止まり道路の奥の土地
次によくあるのが、行き止まり道路の一番奥に、土地の角の一部分のみ道路に接していて、ここが2mないパターンです。
このような土地も、基本的には建て替え・新築することはできません。
< パターン3 >囲繞地
続いて、たまにあるのが、道路に全く接してない土地です。
このような土地を囲繞地(いにょうち)といいます。
囲繞地の人は、他人の土地を通行して道路にでますが、自分の土地は道路に接道していないので建て替えはできません。
< パターン4 >前面の道が建築基準法の道路じゃない
最後にご紹介するのは、一見普通の土地で道路に接しているように見えるけど、実は前面道路が建築基準法上の道路ではないパターンです。
建て替えできない理由の部分で既に解説した通り、建築基準法上の道路に接していない土地は建て替え・新築できません。
再建築不可物件の注意点
再建築不可物件は、価格が相場よりかなり安いので興味を示す方もいらっしゃいます。
建物を古リフォームして、新築同様にして売り出す不動産業者がいるからです。
しかし、再建築不可物件を一般の方が購入する際は注意が必要なので、それについて説明します。
1,建て替えできない
既に説明している通り、再建築不可物件は建て替えができません。
いくらフルリフォームしたところで、基礎や柱、梁などは新築当初のものなので、劣化している可能性が高いです。
将来やっぱり建て替えたいと思っても、無理ですので後悔する可能性が高いです。
2,住宅ローンが使えない
再建築不可物件は、銀行の住宅ローンが利用できません。
市場価値が安すすぎるのと、売れないので担保価値がないからです。
購入時するには現金一括払いとなります。いくら安いとは言え、建て替えできなくても物件によっては数千万しますので普通の人は買えません。
3,売れない
再建築不可物件は基本的になかなか売れません。
理由は2つあって、そもそも建物を新たに建てられない(新築できない)土地を購入したいと思わないということと、住宅ローンが組めないので、普通の人ではとんでもなく安くないと買えないからです。
自分が買ったから他人にも売れるはずだ!と思うかもしれませんが、普通の人は買いません。
>>売れない物件の売却・処分は、仲介ではなく不動産業者買取がおすすめな理由
再建築不可物件は、どんな人が購入する?
再建築不可物件はどんな人が購入するかというと、不動産業者が買い取るか不動産投資家が購入するパターンがほとんどです。
その他には、隣地の人が購入してくれることもあります。
隣地の人以外で、自分がそこに住むという理由で購入する人は、まずいません。
ちなみに不動産業者や不動産投資家は、儲けることを目的として物件を購入するので、価格に対して非常にシビアです。
もし買ってくれるとしても、高値は期待できません。
接道2m未満の【再建築不可物件】を建て替え可能にする方法
接道2m未満の【再建築不可物件】を建て替え可能にする方法を解説します。
最初の方に説明しましたが、再建築不可物件が建て替えできない理由は、以下の2点です。
・建築基準法上の道路に接していない
・道路に接している長さが2mに満たない
建て替え可能にするには、これらを解決するしかありません。
原因別に解決方法をご紹介します。
建築基準法上の道路に全く接していない【再建築不可物件】を建て替え可能にする方法
この場合の解決方法は、4つあります。
・隣地を購入する
・隣地と等価交換をする
・隣地の一部を借りる
・但し書き道路を利用する
それぞれ解説します。
隣地を購入して、自分の土地を建築基準法上の道路に接道させ建て替え可能にする
・1つ目が、隣地を購入して、自分の土地を建築基準法上の道路に接道させる方法です。
例えば↑のような家があった場合、自分の家は建築基準法外の通路に接しているだけなので、建て替えできません。
そこで、建築基準法上の道路に接している隣地の全部、または斜線で表している部分のどちらかを幅2mだけ購入して、建築基準法上の道路に接道している状態にすることで、建て替え可能な土地に変身します。
この方法の難しい点は、以下の2点です。
・隣の人が土地を売ってくれるとは限らないこと
特に購入したい部分に家が建っている場合や、家が新しい場合は難しいでしょう。
・土地の購入費用がかかること
隣地すべてを購入する場合、多額の費用が必要です。また、こういった場合足元を見られやすいので、通常の相場より割高な土地価格になるでしょう。
プロのような技になりますが、一旦隣地を全て購入して、もとの土地を建て替えできるようにな土地の形にして、余った部分を売却するということも場合によっては可能です。
しかし宅建業法違反になる可能性や、多額の資金が必要なこと、合筆や分筆などしなければいけないので、もしやりたいなら不動産会社に相談してみるのがいいかもしれません。
隣地と等価交換をして、建築基準法上の道路に接道させ建て替え可能にする
・2つ目が、等価交換で自分の土地を建築基準法上の道路に接道させる方法です。
等価交換とは、自分の土地の一部と隣地の一部を交換することです。
例えば↑のような家があった場合、自分の家は建築基準法上の道路に接していないので、建て替えできません。
そこで、建築基準法上の道路に接している、隣地の斜線で表している部分(幅2m)と、自分の土地の斜線で表している部分を交換して、建築基準法上の道路に接道している状態にすることで建て替え可能になります。
上の図のパターンだと、自分の土地のメリットは建て替えできるようになることです。
一方隣地も、土地の南側に向いている部分が長くなるのと、南側に隣地の通路部分ができるので、日当たりがよくなるというメリットがあります。
この方法は、分筆や登記費用、仲介してもらう場合は仲介手数料などはかかりますが、基本的には土地を交換するだけなので、費用があまりかからないというメリットもあります。(不足分や多い分の差額を現金で清算する場合もあります)
ただし、隣地の所有者が同意してくれない可能性もあるのが、難しいところです。
隣地の一部を借りて、建て替え可能にする
隣の土地の一部を借りることで、接道義務を満たせば、建て替え可能にすることができます。
ここでいう借りるとは、車の月極駐車場を借りるような賃貸借契約ではなく、購入するのに近い借地契約というものになります。
借地契約は、借地権という土地を利用する権利を購入することになりますので、普通に土地を購入するのに比べれば安くなりますが、普通の土地価格の5~7割くらいの購入費用が掛かることに加え、毎月の借地料や、建て替えや売却する際には承諾料を支払う必要があります。
但し書き道路の許可を得て、建て替え可能にする
・4つ目が、但し書き道路の許可を利用して、建て替える方法です。
但し書き道路による許可とは、ざっくり言うと、建築基準法上の道路じゃなくても、道路のようになっており、建物が建つことがないような土地に接している場合は、ある条件を満たせば建て替え許可をもらえるというものです。
ある条件とは、その土地が存在する自治体によって多少違いがあるので、詳しい内容については役所の建築審査課などに直接確認して下さい。
よくある条件としては、以下のようなものがあります。
接している道路状部分が4m以上ある
道路状部分の所有者全員の、通行承諾がある
例えば上の図のように、自分の家の前に幅4mある基準法外の他人の土地があった場合、基準法外の他人の土地の通行承諾を貰えれば、建て替え可能になることがある。
他にも色々な許可パターンがあるので、繰り返しになりますが、
建て替えたい方はあきらめずに、必ず役所に事情を説明して但し書き道路許可で建て替えできないか、確認して下さい。
家の前の道路が、建築基準法外だったとすると、隣近所も同じように接道義務違反の場合があります。
このような場合、既に役所に相談して建て替えしている人もいますので、意外とあっさりと建て替えできたりします。
特に隣近所の同じような状況の土地の人が建て替えていたら、自分の土地も建て替えられる可能性が高いです。
じつは、但し書き許可を貰って建て替える事例はけっこうあります。しかし、不動産や建築のプロでも取り扱った経験や知識がなく、実際は建て替えられるのに、再建築不可物件として安値で売買されている場合があります。
接道2m未満の再建築不可物件を建て替え可能にする方法
この場合も、解決方法は4つあります。
・隣地の一部を購入して接道の長さを幅2m以上にする
・等価交換して、接道の長さを幅2m以上にする
・隣地の一部を借りて、接道の長さを幅2m以上にする
・但し書き道路の許可
基本的なやり方としては、同じですがよりわかりやすくするために、分けて解説しています。
隣地の一部を購入して接道の長さを幅2m以上にする方法
・1つ目が、隣地を購入して接道の長さを2m以上にする方法です。
↑の図のような土地の場合、斜線部分の隣地を購入して2m以上接道させれば建て替え可能になります。
例えば接道している部分の幅が1.9mだった場合、10cmだけでも購入すれば建て替え可能になります。
10cmだと、通路部分の長さが10mだったとしても、1㎡にしかなりませんので、購入金額もたかがしれています。(その他に分筆、登記、仲介手数料などがかかりますが)
隣地の方が合意してくれないと不可能ですが、建築基準法上の道路に接道していない物件に比べると、ハードルはかなり下がります。
等価交換して、接道の長さを幅2m以上にする
・2つ目が、等価交換で接道の長さを2mにする方法です。
↑の図の斜線で表している部分を交換することによって、接道2m以上にできれば建て替え可能になります。
その他の内容は、建築基準法上の道路に接道していない場合の、等価交換の方法と同様です。
隣地の一部を借りて、接道の長さを幅2m以上にする
上で解説した図の斜線部分を、購入や等価交換ではなく、借りて接道を2m以上にするという方法もあります。
建築基準法上の道路に全く接していない【再建築不可物件】を建て替え可能にする方法でも解説しましたが、これは土地を借りるというより、借地権を購入するといったやり方でなければ、基本的に建築許可は下りません。
但し書き道路の許可
・4つ目が、但し書き道路許可にて建て替える方法です。
但し書き道路の許可では、建築基準法の道路に接していない場合以外に、接道の長さが2mに満たない場合でも、建て替え可能になる場合があります。
自治体やそのほかの条件にもよりますが、例えば東京都世田谷区の場合、
道路に、幅員 1.8 m以上 2m未満で長さ 20 m以下の路地状で接続する敷地であれば、2階建ての戸建で200㎡以下の建物を新築できます。
その他条件があるので、詳しくはリンクを貼っておきますのでご覧ください。https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/sumai/002/002/004/d00039297_d/fil/02.pdf
繰り返しになりますが、但し書きの許可基準は自治体によって異なる場合があります。
世田谷区の例が、他の自治体で可能とは限りませんので、その物件所在地の自治体に必ず確認して下さい。
再建築不可物件を建て替え可能にできそうもない場合の対処方法
今回解説した建て替え可能にする方法にチャレンジしてみても、土地の状況や隣地の人の協力の有無によっては、解決できないこともあると思います。
そうなった場合の対処方法としては、以下の方法があげられます。
・リフォームをして住み続ける
・売却処分する
・賃貸物件として人に貸して、家賃収入を得る
リフォームをして住み続ける
建て替えできない再建築不可物件でも、リフォームすることは可能です。
最近は、住友不動産の【新築そっくりさん】のように、主要構造部以外を全取り換えして、ほぼ新築同様にするリフォームを流行っています。
ただし注意点としては、10㎡以上の増築や、準防火地域・防火地域にある物件を増築する場合は、建築許可を得なければいけませんので、家を大きくするといったことは難しいです。
売却処分する
売れないと言われている再建築不可物件ですが、全く売れないわけではありません。
普通の土地よりかなり安い金額であれば、購入する人はいます。
再建築不可物件を購入する人は、3パターンに絞られます。
1,隣地の人に売却する
普通の人が再建築不可物件を購入しても、再建築不可のままですが、隣地の建て替えできる土地を持っている人が購入する場合、普通の土地と同じ扱いになるので、銀行も融資します。
ただし、だからと言って高値で売却できるとは限りません。隣地の人だってなるべく安く買いたいと思うのが普通です。
もし再建築不可の土地を売却する場合は、まずは隣地の人に声をかけてみましょう。
2,不動産投資家に売却する
再建不可物件を貸した場合、借りる人にとっては建て替えできるかどうかなんて関係ありませんので、それなりの賃料が貰えます。(ただし間口が狭い場合や、日当たりが悪い場合などは、賃料も安くなる)
賃料が高く取れる場合、投資家としては旨味のある物件になるので、ある程度いい値段がつくことがあります。
再建築不可物件は、基本的に住宅ローンが組めないのですが、投資用の場合は融資する金融機関がいくつかありますので、投資用の方が購入しやすいのです。
とは言っても、普通の建て替えできる物件に比べれば、安くなることには変わりありません。
3,不動産業者に売却する
3つの売却方法の中で、一番早く確実に売却できるのは、不動産買取業者に買い取ってもらう方法です。
上の2つの売却方法は、売れる可能性はあっても、すぐ売れるとは限りません。
また、再建築不可物件と言えども、土地が広かったりいい立地にある物件はある程度値段が張るので、一般の人が購入するのは難しくもあります。
不動産買取業者は、一般人に比べると資金力もありますし、事業用ローンなどで融資が組めるので、再建築不可物件であっても購入できるのです。
買取業者は、再建築不可物件を購入して賃貸に出したり、さきほどご紹介したような方法で建て替えできるような状態にして、再度販売します。
不動産業者買取について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>売れない物件の売却・処分は、仲介ではなく不動産業者買取がおすすめな理由
>>訳アリ物件の売却でおすすめの不動産買取業者はどこ?全国対応・買取実績豊富な3社をご紹介!
賃貸物件として人に貸して、家賃収入を得る
人に貸して家賃収入を得つつ、自分はそのお金で他の場所に住むというのも、一つの手です。
家を購入する人にとっては、建て替えできるかどうかは非常に重要な部分になりますが、家を借りる人にとってはそんなことあまり関係ありませんので、賃貸需要のあるエリアであれば、再建築不可物件でも借りてくれる人はいます。
家賃収入を、新たに購入した家の住宅ローンの返済にあてたり、借りた家の家賃の支払いに使うなんてこともできてしまいます。
まとめ
再建築不可物件が建て替えできない理由は、以下の2点
・建築基準法上の道路に接していない
・道路に接している長さが2mに満たない
再建築不可物件の注意点は、以下の3点
・建て替えできない
・住宅ローンが組めない
・売れない
再建築不可物件の解決方法は、売却するのと、建て替え可能にする方法がある。
そのままの状態で売却する場合、高値で売却することはほぼ不可能。
隣人・不動産投資家・不動産業者から購入の申し出があったら、欲張らずに売ることをおすすめします。
建て替え可能にする方法は、以下の4点
・隣地の全部または一部を購入する
・隣地の一部と、自分の土地の一部を等価交換する
・隣地の一部を借りる
・但し書き道路の許可を利用する
再建築不可物件は、不動産や建築のプロであっても、知識や経験が乏しい人が多いのが現実です。
このような物件を相談する場合は、必ずベテランで知識も経験も豊富なひとに相談しましょう。
今回は再建築不可物件について解説しましたが、売れない物件がどうなるのか解説した記事もありますので、興味のある方はご覧ください。
>売れない家はどうなる?不動産仲介会社で見てきた、売れ残った物件が辿る道
その他、再建築不可物件の売却いついて解説している記事もあります。