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人口減少は不動産価格下落に影響するのか?日本全国と東京都のデータで分析してみた

日本は2020年現在人口減少が進んでおり、今後も減少していくことが予想され、不動産価格下落などの影響が心配がされています。

しかし本当に、人口の変化と不動産価格は関係しているのでしょうか?

日本の人口は、2008年の1億2,808万人をピークに減少を続けていますが、2020年現在不動産市場は活況です。

そこで、1975年からの2019年までの日本全国及び東京都の、人口と地価のデータをもとに、人口の変化と不動産価格の関係を調べました。

人口の変化と、不動産価格の関係がわかります!

結果としては、人口が増えても不動産価格が下落しているときがあったり、逆に人口が減っても不動産価格が上昇していることもありました。しかし、バブル時を除くと、不動産価格のピークをつけたタイミングは、日本全国・東京都の両方で、人口が最も多いときだったという結果になりました。

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人口減少は不動産価格下落に影響するのか?

日本全国の、人口と不動産価格

まずは、日本全国のデータから見ていきましょう。

人口は、法務省統計局の発表しているデータを、地価は国土交通省が発表している全国公示地価のデータを利用しています。

【公示地価】とは、国土交通省が、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に発表するもので、どのように価格が決められるかと言うと、不動産鑑定士が、実際の取引事例やその土地の収益性などを考慮して鑑定評価を行います。

日本全国の人口推移

日本の人口は、右肩上がりで推移してきましたが、2008年の1億2,808万人がピークで、それ以降はゆるやかに減少を続けています。

1975年の人口に比べると、ピークの2008年で14.4%増、2019年では12.7%人口が増えています。

日本の人口の推移
統計ダッシュボード (https://dashboard.e-stat.go.jp/)のデータを加工して作成

日本全国の、住宅地の平均公示地価

地価は、75年以降に3度上昇する時期があります。

まず1度目が、1978年からバブルが崩壊する1991年まで価格が急上昇しました。

バブル崩壊後2006年まで下落が続いていましたが、2008年まで2年間上昇(2度目)。

その後リーマンショックが起き、2014年まで下落したが、2015年~現在までアベノミクス効果で上昇しています(3度目)。

バブル後の不動産価格が一番高い時期は、2008年の126,900円(1㎡あたり)でした。

全国の住宅地平均公示地価の推移
国土交通省地価公示(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000043.html
のデータを加工して作成

日本全国の、人口と不動産価格の比較

上で見てきた2つのグラフは形が全く異なりますが、2つのグラフを重ねてみると以下のようなグラフになりました。

日本の人口と全国の住宅地平均公示地価の関係

1975年にだいたい始まりが同じようにグラフを合わせると、バブルの頃の不動産価格は、全く人口と関係性の見いだせない価格になっていますが、全国の人口のピークとバブル後の不動産価格のピークが、同じ2008年になっています

相関係数は、1975年~2019年までだと、0.38でした。

しかし、バブル時の価格があまりに実態とかけ離れた価格だと考慮して、バブルの頂点から前後12年ほどを無視して考えた場合、不動産価格と人口の増減はある程度相関性があるように見えます。

そこで、2005年~2019年までの相関係数を出してみると、0.37となり、あまり変わりありませんでした。

人口は2008年にかけてずっと上昇し、その後ゆるやかに下落していますが、不動産価格は3度の上昇とその間の2度、下落を経験していますので、単純に人口が増える⇒不動産価格が上がる、人口が減る⇒不動産価格が下がる、とは言えない結果となりました。

不動産価格は、1年単位で上下することもありますが、人口は今の時代短期間で上下するようなことはありません。

人口の変化が不動産価格に強く影響するなら、地価のグラフや値動きも人口と同じような動きになるはずです。

不動産価格は、短期的には人口の増減よりも、景気やその他の影響を強く受けるものと思われます。

東京都の、人口と不動産価格

次に、東京都の人口と不動産価格のデータを見てみましょう。

東京都の人口推移

東京都の人口は、70年代後半と、80年代後半~90年代前半にかけて減少している時期があり、1995年頃まで伸び悩んでいましたが、それ以降は一貫して右肩上がりに増加していますので、一番人口が多いの、直近の2019年になっています。

80年代後半~90年代前半にかけて人口が減少した理由は、バブルで不動産価格が高騰したことに伴い、固定資産税が高くなったことや、地上げ(開発したい土地に隣接する土地をまとめて買い上げて、まとまった大きな土地にして価値を高めること)などにより、都心部から郊外へ引っ越した人が増えたことが理由とされています。

1975年の人口に比べて、2019年の人口は約20%増加しています。(全国はこの間約13%の増加)

東京都の人口の推移
統計ダッシュボード (https://dashboard.e-stat.go.jp/)のデータを加工して作成

東京都の、住宅地の平均公示地価

80年代後半にバブルで価格が急上昇。バブル崩壊後2005年まで下落が続いましたが、2008年まで上昇。リーマンショックにより2012年まで下落しましたが、2013年~現在までアベノミクス効果で上昇しています。

バブル後の最高値は、2019年になっています。

東京都の住宅地平均公示地価の推移
東京都財務局(https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/kijunchi/chikakouji.html
地価公示関連データを加工して作成

ここで少し余談になりますが、東京都の住宅地の平均公示地価は、だいたい全国のものと同じような値動きになっており、グラフも似たような形をしていますが、2点大きな違いがあります。

・1点目が、価格の変化の早さです。

東京都は、バブルのピークが1988年でそれ以降価格が下がり始めましたが、全国の場合、バブルのピークは1991年なので、東京都の方が3年早いです。

また、バブル崩壊以降の上昇局面を見ても、東京都は2006年と2013年に価格が上がり始めましたが、全国では2007年と2015年でした。

それぞれ、東京都の方が1年と2年早く上昇しています。

・2点目が、価格の変化の幅です。

東京都の方が、値上り幅が大きく、値下がり幅が小さいです。

バブル崩壊後の、底値からリーマンショック前の高値(2008年)まで、東京都は約26%上昇しているのに対し、全国では約10%しか上昇していません。

リーマンショック前の高値から、その後の底値までの下落率も、東京都は約16%ですが、全国では約20%下落しています。

リーマンショックの安値から、2019年現在までの上昇幅も、東京都は約24%上昇していますが、全国では約15%上昇にとどまっています。

全国と東京23区の住宅地平均公示地価の推移

東京都の、人口と不動産価格の比較

全国同様に、人口と公示地価のグラフを重ねてみると、以下のようなグラフになります。

東京都の人口と住宅地平均公示地価の関係

全国同様に、人口が一番多い時期と、バブル後の不動産価格の高値が同じ2019年になっていますが、グラフの形としては相関性があるように見えません。

東京都の場合、人口が減少しているのに不動産価格が上がっていたり、逆に人口が増えているのに不動産価格が下がっているときがあります。

実際に、1975年~2019年までの相関係数は、0.04となりほぼ無関係となりました。

しかし全国同様に、バブルの影響を無視して2005年~2019年までの相関係数を出してみると、0.64となり、ある程度相関が見られました。

上記より、全国同様に単純に人口が増える⇒不動産価格が上がる、人口が減る⇒不動産価格が下がる、とは言えない結果となりました。

海外の人口と不動産価格

おまけで、海外ではどうなっているのか調べてみました。

英不動産コンサルタント会社ナイトフランクが発表した「2019年ウェルス・リポート」によると、2018年に100万ドルで購入できた各都市の住宅の面積(要は住宅用不動産価格が高い世界の都市ランキング)は以下のようになっています。

(各国の人口は、国連が発表した2019年のデータをもとに追記しています。)

1位 モナコ 16㎡ (モナコ公国 人口 3万9千人)

2位 香港 22㎡ (香港 人口 743万人)

3位 ロンドン・ニューヨーク 31㎡ (イギリス 人口 6,353万人)

4位 シンガポール 36㎡ (シンガポール 人口 580万人)

5位 ロサンゼルス 39㎡ (アメリカ 人口 3億2,906万人)

6位 ジュネーブ 41㎡ (スイス 人口 859万人)

7位 パリ 46㎡ (フランス 人口 6,513万人)

8位 シドニー 52㎡ (オーストラリア 人口 2,520万人)

9位 上海 57㎡ (中国 人口 14億人)

10位 北京・東京 67㎡ (日本 人口 1億2,600万人)

*2018年12月31日の為替レートに基づき算出
*出所:Knight Frank

このデータを見ると、単純にその国の人口の多さが不動産価格に影響しているとは言えず、街の人口密度やその街にいる人の裕福さ、海外からの投資の多さなどが関係していると思われます

まとめ

全国、東京都ともに、人口が一番多い時期とバブル後の不動産価格の高値を付けた時期が同じ年になりました。

全国 ⇒ 2008年

東京都 ⇒ 2019年

しかし、相関係数は、1975年~2019年 全国 0.38 東京 0.04

バブルの影響を除外した、2005年~2019年 全国 0.37 東京 0.64

となり、単純に人口が増える⇒不動産価格が上がる、人口が減る⇒不動産価格が下がる、とは言えませんでした。

長期的にみれば、ある程度人口と不動産価格は関係しているのかもしれませんが、短期~中期的にみると人口より、景気やその他何かしらの影響の方が、不動産価格には大きいと思われます。

他にも不動産価格に影響を与えそうな変動要因について調査している記事がありますので、興味のある方は是非ご覧ください。

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