不動産価格って、景気がいいときは上がって、景気が悪いときは下がるイメージがありませんか?それなら、GDPと不動産価格は相関するのではなかろうか?と思い調べてみることにしました。
1994年~2019年までの、GDPと全国の住宅地の平均公示地価のデータをもとに、グラフにして比べてみました。
これを見れば、GDPと不動産価格の関係がわかり、将来の不動産価格の動向がある程度予測できる可能性があります。
結果としては、2000年頃から不動産価格はGDPの変化に遅れて相関することが判明しました。
GDPと不動産価格に相関関係はあるのか?
日本の名目GDP
GDPのデータは、内閣府の国民経済計算(GDP統計)のデータを引用しております。
また、不動産価格は物価変動の影響を受けると思われるので、物価の影響を除かない名目GDPを使用しています。
データをグラフにしたものは、以下になります。
1995年~2007年頃まで、20兆円くらいの範囲で横ばいでしたが、リーマンショックにより2008年~2012年まで低迷。
2013年からアベノミクス効果で上昇しており、2019年現在過去最高となっております。
全国の住宅地の平均公示地価
地価は国土交通省が発表している全国公示地価のデータを引用しています。
データをグラフにしたものは、以下になります。
バブル崩壊後、一貫して下落してきましたが、2006年から2008年までの2年間上昇。
その後リーマンショックが起き、2014年まで下落したが、2015年~現在までアベノミクス効果で上昇しています。
バブル崩壊後の高値は、2008年の1㎡あたり126,900円でした。
GDPと全国の住宅地の平均公示地価の比較
2つのグラフを重ねてみると以下のようなグラフになりました。
赤い線がGDP、青い線が地価のグラフです。
バブルの影響が残っていると思われる2000年頃までは、あまり関係ないように見えます。
1994年~2019年までの相関係数は、0.02となり、相関関係はないという結果となりました。
しかし、2000年以降は赤いGDPのグラフに数年遅れて、青い地価のグラフが、同じような動きになっているように見えます。
そこで2000年~2019年のデータだけ抜き出すと、以下のようなグラフになりました。
やはり、3年程遅れてGDPの変化に合わせて、地価が変動しているように見えます。
そこで、試しにバブルの影響を除いた2003年~2019年の地価と、そこから3年前(2000年~2016年)のGDPの数値との相関係数をだしてみると、0.76となり、強い相関関係となりました。
ちなみに相関係数は、2年ずらすと0.58、4年ずらすと0.74となりました。
3年ずらしたグラフは以下です。
縦軸の変動幅が左右で違いますが、相関係数が0.76あるだけあって、上下の動きはとても似ています。
上記より、2000年代前半から、不動産価格は名目GDPから3年程遅れて、相関しているという結果になりました。
オマケで、2000年頃からの名目GDPと東京都の住宅地の平均公示地価の関係を調べてみたところ、相関係数は1年ずらすと0.67、2年ずらすと0.63となりました。
全国に比べると、GDPの変化に対する地価の変化するスピードが早く、変化の幅も大きくなっています。
各年の、数値の表も載せておきます。
数値の赤い部分は前年比で上昇している年、青い部分は下落している年を表しています。
GDPは一年単位で上下することがありますが、不動産はそのようなことはないのが特徴です。
表からも、東京の方がGDPの変化に対する地価の変化のスピードが早く、全国では少し遅れて地価が変化するのがわかるかと思います。
東京のマンション価格とGDPの関係
次は、マンション価格とGDPの関係をみてみます。
下のグラフは、東京都の中古マンションの平均成約価格とGDPを表したグラフと表です。
東京都のマンション価格は、GDPの変化に非常に連動しやすく、上昇・下落のタイミングは、上記期間で約95%が同じ動きになっています。
今後の不動産価格の予想
今までの検証結果より、将来の不動産価格がどうなるのか予想してみることにしました。
あくまで上記の結果をもとに机上で計算したものですので、結果通りになる保証はありませんので、ご了承下さい。
まず、ざっくりした数字になってしまいますが、2020年の1~9月までの3四半期の名目GDPの平均値をだすと、約534兆円になります。
2019年度(約558兆円)に対して、コロナ禍の影響もあり4.3%減となっております。
また、1994年以降の過去のGDPの推移を見てみると、1年だけGDPがマイナスになったことはなく、1度マイナスになると、最低でも2年連続でマイナスになっています。
もし過去と同じパターンになるとしたら、名目GDPは2020年及び2021年は連続でマイナスになり、東京では2021年、全国では遅くとも2023年頃には不動産価格が下落していると予想されます。
2020年末現在、コロナ禍で経済は悪化していますが、不動産の取引数は落ち込んでおらず、不動産市場にはそれほど影響がでていない状況だと言われています。
これは一見不思議なようですが、今回の調査結果を見れば、過去にもあったことだとわかります。
しかし、国土交通省が公表している地価LOOKレポートによると、令和2年第二四半期から上昇地点が激減し、下落地点が急激に増えているのがわかります。
来年くらいには、下落地点がもっと増える可能性があります。
追記(2021年10月) ⇒ 2020年度の名目GDPは、536.6兆円(前年比約3.9%減)となりました。2021年4~6月期時点では544兆円で前年比増加、2年連続マイナスにはならなさそうです。
GDPとの相関性が高い中古マンション成約価格は、2020年は上昇しております。
今回のGDPの減少は、コロナウイルスによる1回目の緊急事態宣言の影響が多大であったが、一時的なもので、GDPもすぐに回復していることから、マンション価格には影響がでなかったものと思われます。
このまま2021年もGDPの回復、上昇が続けば不動産価格は下がることはなく、上昇していくかもしれません。
まとめ
調査結果として地価は、2000年代に入ってから
全国ではGDPに3年遅れで強く相関する。(相関係数0.76)
東京ではGDPに1年遅れで相関する。(相関係数0.67)
マンション価格の変化は、GDPの変化に非常に連動しやすい。
という結果になりました。
調査結果より今後の地価を予想すると、
四半期ベースのGDPは、3四半期連続で前年比割れしており、今後地価も下落する可能性が高い。
国土交通省の地価LOOKレポートによると、既に下落している地点が出始めているので注意が必要。
他にも不動産価格に影響を与えそうな変動要因について調査している記事がありますので、興味のある方は是非ご覧ください。