将来日本は人口が減るが、人口密度の高い都市部では、それほど不動産価格は下がらないのでは?なんて意見もあります。
確かに東京都は、人口密度が日本で一番高く、将来的にも人口が増えると予想されている地域もあります。
しかし、本当に人口密度と不動産価格は関係しているのでしょうか?そう思って検証してみることにしました。
2020年の、23区の人口密度と住宅地の平均公示地価を比較しています。
結論としては、東京23区全体に関しては人口密度と不動産価格は相関するが、区によって異なり、人口密度が低いのに地価が高い区や、逆に人口密度が高いのに地価が低い区もありました。
ちなみに、人口と不動産価格の関係を調査した記事もありますので、ご興味のある方は是非そちらもご覧ください。
>>人口減少は不動産価格下落に影響するのか?日本全国と東京都のデータで分析してみた
東京23区でみる、人口密度と不動産価格の関係
東京23区の人口密度
まずは、東京23区の人口密度から見ていきます。
人口密度は、区に住んでいる人口 ÷ 区の面積 で求められ、人口が多く区の面積が狭いほど人口密度が高くなります。
人口密度は、1位 豊島区、2位 中野区、3位 荒川区、4位 文京区、5位 台東区となっております。
人口としては、1位 世田谷区、2位 練馬区、3位 大田区、4位 江戸川区、5位 足立区となっていますが、これらの区は面積が広いので、人口密度も低くなっています。
東京23区の住宅地の平均公示地価
続いて、東京23区の住宅地の平均公示地価を見ていきます。
地価に関しては、都心部が高く次いで城南、城西、城北、城東と時計回りに地価が低くなっています。
1位 千代田区、2位 港区、3位 渋谷区、4位 中央区、5位 文京区となりました。
一応言っておくと上記は【住宅地】の価格です。商業地の価格ではありません。
東京23区の人口密度と不動産価格の関係
東京23区の人口密度と不動産価格の関係は以下の表と、散布図になります。
表から見ると、あまり相関性が無いように見えます。
散布図を見ると、右肩下がりになっているように見えなくもないですし、地価トップ4区を除くと逆に右肩上がりになっているようにも見えます。
相関係数を出してみると、ー0.47となりました。
単純に相関係数でいうと、弱い相関ですが、人口密度が上がるほど地価が下がるという驚くべき結果になりました。
個人的には、人口密度が高い方が地価も高くなるのでは?と思っていたので以外でした。
表や散布図を細かく見ると、相関しているように見える区もあれば、全く相関してないように見える区もあります。
なぜこのような違いが生まれているのでしょうか?
東京23区の民有住宅地面積と民有住宅地人口密度
色々調べていくと、東京都都市整備局が発行している統計資料【東京の土地2018】の、民有宅地の用途別内訳という部分に、各区の民有住宅地の面積が記載されていました。(民有住宅地とは、行政などが所有していない、固定資産の課税対象地の内、住宅用宅地が連続する地区のこと)
23区では区ごとに特色があり、都心部では商業地として使われている割合が高く、世田谷区・杉並区などは区の大部分が住宅地として利用されています。
また、千代田区は商業利用されている面積が多い他、行政機関も多いため、実質的に住宅地として使われている面積は非常に少なくなっています。
こちらの数値の方が、実態を表しているのではないかと思います。
民有住宅地の面積をもとに作成しなおした人口密度は、下の表の通りとなります。
単純に人口を区の面積で割った人口密度と、全く違うものになりました。
23区で最も人口密度が低かった千代田区が、最も人口密度が高い区になっています。
その他、中央区、江東区、港区などが大きく順位をあげました。
逆に、豊島区、中野区、目黒区、杉並区、世田谷区、練馬区などの順位が低くなりました。
東京23区の民有住宅地人口密度と不動産価格の関係
東京23区の民有住宅地人口密度と不動産価格の関係の表と、散布図は以下になります。
民有住宅地のデータを用いた場合、先ほどとは一転して人口密度が上がると、地価が上がるという右肩上がりの図になりました。
相関係数は、0.66となり先ほどより強い相関となっています。
しかし、こちらのデータでも散布図はけっこうばらけています。
そこで、特徴のある区を抜き出して、理由を考えてみます。
・人口密度が高く、地価も高い区
千代田区、中央区、台東区
これらの区は、民有宅地の内、商業地として利用されている割合が高い(50%以上)ことに加え、平均的な容積率が高いので、住宅としては中高層のマンションが中心です。
土地の希少性+高容積率 が人口密度も地価も高い要因になっていると思われます。
・人口密度が低いわりに、地価が高い区
港区、渋谷区、目黒区、世田谷区、杉並区
これらの区は都心または都心に近い位置にあり、マンションもありますが、低中層の戸建て住宅が多く存在する区です。
戸建てはマンションに比べて一人当たりの土地面積が広くなります。さらに戸建ての高級住宅地は、1件あたりの土地面積が広いことが求められるので、人口密度が低いのに地価が高くなっているのかもしれません。
・人口密度が高いわりに、地価が低い区
荒川区、墨田区、江東区
荒川区と墨田区は、道が狭く戸建てが密集しています。江東区は道路は広いですがマンションが多いので人口密度が高くなっていると思われます。
道が狭く戸建てが密集しているような場所は、車が利用しづらいことに加え、日当たり通風が悪く、火災のリスクも高いため、住宅地としては地価が下がります。
また、これら3区は隅田川や荒川に接していて、23区の中でも災害リスクが高い区であることも関係しているのかもしれません。
他にも、城南地区に比べると容積率が高い傾向にあり、住宅の供給にまだまだ余裕があると思われ、既に需要と供給のバランスが崩れ始めている可能性もあります。
(※上記は考えられる要因というだけで、実際にそうなのかはわかりません)
・人口密度と地価の相関性が高いと思われる区
文京区、品川区、新宿区、豊島区、中野区、北区、大田区、板橋区、練馬区、江戸川区、葛飾区、足立区
上記12区だけで散布図を作ると以下のようになります。
きれいな右肩上がりになり、相関係数も0.87と強い相関になっています。
まとめ
実質的な住宅地の面積で算出した人口密度と、不動産価格の関係は相関する。
しかし、人口密度が低い割りに不動産価格が高い区や、人口密度が高い割りに不動産価格が低い区もあり、全体としてみれば強い相関とは言えない。
という結果になりました。
不動産価格には、何かひとつだけでなく、複数の要因が影響すると思われますが、人口密度もその中のひとつだと思われます。
今回は、23区ごとの人口密度と不動産価格の関係のみを比較してみましたが、今後は人口密度の変化が不動産価格にどのような影響を与えるのか調べてみたいと思います。
他にも不動産価格に影響を与えそうな変動要因について調査している記事がありますので、興味のある方は是非ご覧ください。