ハザードマップでわかる東京都江東区の災害リスク

近年、地震や台風による洪水、土砂災害など自然災害が多発しており、災害に対する注目度も上がっています。

自然災害の被害に遭うと、経済的な損害だけでなく命の危険もあります。

そんな方のために、地震・洪水・高潮・液状化・土砂災害などのハザードマップを見て、東京都江東区のどの街が災害に強い安全な街なのか？どの街が災害の危険度が高い街なのか、災害リスクを調査しました。

江東区は、標高が低く河川や海に囲まれた地形のため、全体的に洪水や高潮、液状化などの災害リスクが高い街です。

残念ながら、すべての災害に強い安全な街はありません。

区内で比較的安全な場所をあげるとすれば、区の南西部にある豊洲６丁目・有明などです。

ここは埋立地なので液状化のリスクがありますが、内陸部より標高が高くなっており、洪水・高潮・津波などの水害に強い街です。

また、地震の揺れは大きいと想定されますが、道路が広く整備され地震に強い建物が多いので建物の倒壊や火災のリスクは低いです。

ハザードマップとは

ハザードマップとは、自然災害の危険性が高い場所を、危険度別に色分けして表示している地図です。避難場所や避難経路についても記載されています。

災害の危険性が高い場所に住んでいる人が、

に作成されています。

最近では、マイホームを購入するときの参考資料としても利用されています。

ハザードマップには、自然災害によって様々な種類があります。

自然災害の危険性は住んでいる場所によって異なるので、全ての市区町村に全ての種類のハザードマップがあるわけではありません。

例えば海に面していないところでは、津波ハザードマップはありません。

公表しているハザードマップの種類が多いところほど、自然災害の危険性が高いとも言えます。

ハザードマップについてもっと知りたいという方には、詳しく解説している記事がありますのでそちらをご覧ください。

ハザードマップとは何か？種類や見方、活用方法などをわかりやすく解説します！

また、自然災害の危険性は住んでいる場所以外に、起こる災害によっても種類が変わってきます。

災害ごとのチェックすべきハザードマップは、以下になります。

それでは、実際に様々な資料を見ていきます。

江東区の【地形】

各災害の危険性を見る前に、江東区の地形がどうなっているのか見ていきたいと思います。

災害の危険性が高い場所は、主に周囲に比べて標高の低い場所（低地）、急激に標高が変わる場所（急傾斜地）、川や海沿いの地域になります。

これらは、色別標高図を見れば大体のことがわかります。

色別標高図からは色の違いや、色が変わっている部分の形で以下のようなことがわかります。

江東区は、四方を海と河川に囲まれているのにくわえて、区内にも河川や運河が入り組んでいるため、区内全体が河川沿い・海沿いのような場所です。

また、かつて地下水をくみ上げていた影響により地盤沈下が進み、区の北東部にある南砂や亀戸では４ｍ以上沈下し、ゼロメートル地帯と呼ばれる海抜より標高が低い土地となっております。

自然災害に強い場所というのは、基本的には台地の上などの高台になるのですが、江東区では人工的に作られた南側の埋立地くらいしか、標高がそれなりに高い場所はありません。

上記より、江東区は洪水や高潮など、２３区の中でも特に水害に弱い街と言えます。

各災害のハザードマップを見れば、実際にどれくらい災害に弱いのかより理解頂けると思いますので、ハザードマップをもとに各災害の危険度を見ていきます。

江東区の【洪水】危険度

江東区水害ハザードマップをもとに、水害の危険性が高い場所を見ていきますが、その前に水害と関係性の深い、河川について解説します。

江東区を流れる河川

江東区は、北を北外間川、東を旧中川と荒川、西を隅田川、南を東京湾に囲まれています。

また、区の内陸部には中小河川や運河が複数入り組んでおり、東京２３区の中で一番水を身近に感じられる区かもしれません。

河川と海に囲まれている江東区は、区内全体が河川沿いのような土地で水害の危険性が高いです。

大雨で河川が氾濫した場合、どこがどれくらい浸水するのかハザードマップをもとに見ていきます。

江東区で洪水の危険性が高い場所

洪水について江東区では、荒川の堤防が決壊して氾濫した場合と、下水の排水能力を上回った雨が降ることにより内水氾濫が発生した場合の、２種類の水害ハザードマップを公表しております。

・江東区洪水ハザードマップ

想定される雨量：荒川流域で７２時間に６３２ｍｍ

荒川が氾濫した場合、区の内陸部は全体的に浸水します。（南部は途切れていますが、浸水しない想定となっております。）

特に被害が大きいと予想されるのが、荒川に近いかつ海抜０ｍ地帯の北東部で、浸水深は深いところで５ｍ以上、大部分で３～５ｍ未満と予想されています。

浸水継続時間についても、北東部では２週間以上も水が引かない想定となっており、万が一荒川が氾濫した場合には、甚大な被害となる見込みです。

・江東区大雨浸水ハザードマップ

想定される雨量：時間最大雨量１１４ｍｍ、総雨量５８９ｍｍ

続いて内水氾濫が起きた場合のリスクをみていきます。

こちらも洪水ハザードマップ同様、内陸部の方が浸水する場所が多く、浸水深も深くなっております。

１ｍ以上浸水する想定となっている場所（青～濃い青）も多く存在するので、内水氾濫であっても非常に危険です。

また、内水氾濫の場合は、南側の埋立地部分でも浸水する場所があります。

南側の埋立地は浸水したとしても比較的軽度で済みますが、塩見だけは１～２ｍ未満の浸水想定となっており危険性が高いです。

江東区の【高潮】危険度

高潮とは、台風や発達した低気圧が通過する際、海水面（潮位）が大きく上昇する現象です。
満潮と高潮が重なると高潮水位はさらに上昇して、大きな災害が発生しやすくなります。

高潮が発生すると海面が上昇することによって、隅田川や荒川、その他の河川水位も上昇し、浸水する可能性があります。

江東区高潮ハザードマップをもとに、高潮のリスクを見ていきます。

左の図が浸水する深さ・右の図が浸水が継続する時間を表しています。

・高潮発生時に想定される浸水深

区の南側にある埋立地（緑の枠で囲まれた部分）以外は、全体的に浸水する可能性があります。

浸水する深さは、海側より北部の方が深くなる見込みで、特に北東部では広範囲に渡って水深５～１０ｍ未満となっており、甚大な被害が予想されています。

・高潮発生時に想定される浸水継続時間

浸水が継続する時間は、浸水する場所の大部分が１日以上浸水し続ける見込みです。

浸水深が深くなる区の北東部では、浸水継続時間が１週間以上となる見込みで、非常に危険です。

水につかる深さや時間を考慮すると、災害対策ではどうにもならない可能性があるレベルなので、万一の際にはどこにどのようなルート・方法で避難するのか、しっかり考えておく必要があるでしょう。

江東区の【津波】危険度

東京都の試算によると、南海トラフ巨大地震（M９クラス）が発生した場合、江東区では最大で高さ２.６３ｍの津波がくる想定となっています。

しかし、東京湾内湾で江東区にある防潮堤の高さは４.４７～６.８７ｍ、荒川と隅田川の堤防の高さもそれぞれ、６.８７ｍ・５.１７ｍとなっているため、津波の高さを上回っています。

中小河川についても、水門を閉じることによって津波の流入を防ぐことが可能とされています。

ただし、大地震の影響で防潮設備が破損するなどして、水門を閉じることができなかった場合、中小河川沿いで浸水する可能性があります。

下の図は、南海トラフ巨大地震が発生した場合の、最大津波高とその場所、浸水分布を表した図です。

津波が発生した場合、東京メトロ東西線【木場駅】・【門前仲町駅】周辺の中小河川や、運河沿いで浸水する可能性があります。

江東区だけでなく、東京２３区全体の津波危険度について知りたいという方には、詳しく解説している記事がありますので、そちらをご覧ください。

＞＞津波ハザードマップでわかる、東京都２３区の津波危険度

江東区の【地震】危険度

地震危険度については、地盤の揺れやすさ・首都直下地震発生時に予想される震度・大地震発生時の危険度の３つをみていきます。

江東区の地震の揺れやすさ

まずは、地震が起きたとき揺れやすい場所はどこなのか、みていきたいと思います。

下の図は、東京２３区の表層地盤の揺れやすさを表しています。

黒い〇で囲まれている場所が江東区です。

東京２３区は、東部に沖積層という軟弱な地盤の低地が広がっており、東側の方が揺れやすという特徴があります。

東部にある区の中でも、江東区は特に揺れやすい街の一つです。

図を拡大して、詳細な情報をみていきましょう。

江東区は、全体的に揺れやすい地質となっておりますが、西側にいくほど揺れにくくなっています。

これはなぜかというと、沖積層という軟弱な地盤の深さが西側の方が浅いからです。

地盤が比較的良好な西側は、沖積層の深さが１５～２０ｍ程度ですが、地盤が悪い東部では３０ｍ以上にもなります。

埋立地は地盤が悪くて地震で揺れやすいイメージを持つ人も多いと思いますが、盛土のさらに下の地層がどんな状況なのかによって、揺れやすさが大きく異なります。

沖積層は、地震の際に揺れやすいだけでなく、後ほど解説する液状化現象も起きやすいです。

また、地盤沈下も起きやすいため、建物の中では比較的軽量な木造２階建て住宅を建てる際でも、地盤改良工事が必要となることが多いです。

地盤改良工事は、数十万円～数百万円かかることもありますので、家を建てようと思っている方は注意が必要です（費用は、地質や土地の広さによって変わります）。

首都直下型地震発生時、江東区で予想される震度

つづいて、首都直下型地震がおきたら、どれくらい揺れるのか見ていきます。

下の図は東京都が公表している、首都直下地震の震度分布予想図です。

赤い〇で囲まれた場所が、江東区です。

首都直下地震が発生した場合、江東区では一部の地域で震度７、その他の地域ではほぼ全域が震度６強の想定となっており、東京２３区の中でも最も地震の揺れが大きくなると予想されています。

揺れやすい地質と、首都直下地震で予想される震源地に近いことが影響しています。

拡大して見てみましょう。

南側の埋立地の他、内陸部の一部や、南東部で震度７の想定となっております。

南砂町駅周辺や、北の方だと扇橋・千田・千石・石島・海辺周辺などです。

震度７と言えば、1995年に発生した阪神淡路大震災と同じレベルの揺れになります。

阪神淡路大震災では、ビルやマンションが多数倒壊しましたが、新耐震基準で設計された建物については、阪神淡路大震災でも被害が少なかったことがわかっています。

旧耐震基準（1981年6月1日より前に建築確認申請された建物）で建てられているマンションや戸建てについては、耐震補強をしていない限り、首都直下型地震で倒壊する危険性があります。

江東区は２３区の中でも特に地震危険度が高い区ですので、中古マンション・戸建てを購入する際は、旧耐震基準の古い物件は避けた方がいいでしょう。

大地震発生時、江東区で危険性が高い場所

地震に対する危険度は、震度がどれくらい大きいかだけでは測れません。

地震に強い建物が多いのか少ないのか、建物の密集度合いなどで、災害時の危険度は大きく異なります。

下の図は、東京都が公表している地震に関する地域危険度測定調査より、江東区の建物倒壊危険度・火災危険度・避難活動困難度を総合的に判断して、地域の危険度を表したものです。

江東区では、北東部に危険度の高い町が多い傾向にあります。

地域危険度が特に高い、ランク５・４の場所の住所は以下になります。

上記の町は、道路が狭く木造の戸建てやアパートが密集している傾向にあるので、災害危険度が高いだけでなく、日当たりが悪かったり、車が利用しづらかったりして、住環境としても良くない場合があります。

逆に危険度の低い街は、道路が広く整備されている街や、木造の戸建てより鉄筋コンクリート造のマンションが多い街です。

これから家を探す人にとっては、そう言った意味でも参考になる情報だと思います。

江東区だけでなく、東京２３区全体の地震危険度について知りたいという方には、詳しく解説している記事がありますので、そちらをご覧ください。

＞＞東京２３区【地震危険度ランキング】地震に強い地域はここだ！

江東区の【液状化】危険度

液状化については、東京都が公表している東京の液状化予測図（平成２４年度改訂版）をもとに、液状化リスクがある場所を見ていきます。

江東区では、所々液状化の可能性が低い地域もありますが、全体的に液状化するリスクがあります。

液状化する可能性が高い地域も多く存在し、平成２３年の東日本大震災の際には、実際に以下の場所で液状化の被害が確認されています。

液状化予測図で、液状化の可能性が高い地域を含む住所は以下になります。

※　上記住所地内の全ての場所が、液状化する可能性が高いわけではありません。詳しい位置については液状化予測図をご確認下さい。

江東区の【土砂災害】危険度

土砂災害とは、土石流・地すべり・がけ崩れなどのことで、大雨の際や大きな地震が発生したときに起こりやすい災害です。

江東区は高低差のない地形のため、土砂災害の危険性はありません。

土砂災害の危険性がある場所を表す、土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域は存在しておらず、土砂災害ハザードマップも作成されていません。

ハザードマップでわかる東京都江東区の災害リスク【まとめ】

江東区は、標高が低く河川や海に囲まれた地形のため、全体的に洪水や高潮、液状化などの災害リスクが高い街です。

残念ながら、すべての災害に強い安全な街はありません。

区内で比較的安全な場所をあげるとすれば、区の南西部にある豊洲６丁目・有明などです。

ここは埋立地なので液状化のリスクがありますが、内陸部より標高が高くなっており、洪水・高潮・津波などの水害に強い街です。

また、地震の揺れは大きいと想定されますが、道路が広く整備され地震に強い建物が多いので建物の倒壊や火災のリスクは低いです。

区の各災害に対する特徴は、以下になります。

マイホームを購入する予定がある方は、今回の調査結果を参考にして頂いて、最終的には詳細な位置の災害危険性をハザードマップなどでしっかり確認しましょう！

また、日頃から災害対策をしておくのも重要です。自然災害は広範囲に影響を及ぼすので、安全な街に住んでいても、ライフラインが使えなくなる可能性があります。

防災用品を用意するなど、万が一のことが起こっても大丈夫なように対策しておきましょう！

当サイトでは、東京２３区で安全な街はどこなのか調査して、ランキングにした記事もございますので、興味のある方は是非ご覧ください。

江東区は、２３区中１８位にランクインしています。

＞＞ ハザードマップで見る、東京２３区災害に強い安全な街ランキング

また、他の区の安全な街をハザードマップをもとに調べた記事もあります。

＜　区ごとの安全な街を調査した記事　＞

その他、当サイトではマイホームを購入する際の優先順位として、１番が災害に対する安全性、２番が資産価値だと考えております。

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